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デジタルタトゥーとは?インターネット上に残る情報の危険性を解説

<この記事を監修した弁護士>

モノリス法律事務所 代表弁護士
河瀬 季(かわせ とき)

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SNSやインターネットが普及した現代において、「デジタルタトゥー」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、この言葉の意味や伴うリスクを完全に理解している人はどれくらいいるのでしょうか?
本記事では、デジタルタトゥーの意味や種類について詳しく解説したうえで、SNSでの差別的発言や不適切な画像が拡散されることで及ぼす悪影響についても説明します。さらに、デジタルタトゥーを予防するための具体的な対策や、デジタルタトゥーが残ってしまった場合に消去するための具体的な方法についても紹介します。

デジタルタトゥーとは?

変更案②

デジタルタトゥーとは?

デジタルタトゥーとは、インターネット上に半永久的に残り、削除することが困難な個人情報や投稿を指します。この用語は「刺青(タトゥー)」と「デジタル」を組み合わせたもので、一度入れたタトゥーが簡単には消せない特性になぞらえています。つまり、一度インターネットに公開された情報は、半永久的に残り続ける現象を表現しているのです。

今日では、SNSの普及により、個人がインターネットで情報を発信することが一般的になりました。しかし、不適切な内容や偽情報を投稿してしまった場合、その情報が拡散され、デジタルタトゥーとなり、就職や社会生活に悪影響を及ぼすこともあります。匿名性を背景にした誹謗中傷や迷惑行為が行われるケースも増えており、その結果として法的な問題になることも少なくありません。

デジタルタトゥーの具体例を詳しく解説

デジタルタトゥーの具体例を詳しく解説

デジタルタトゥーは、一度インターネット上に拡散されると、消去が困難な情報として残り続けることが多いです。以下では、デジタルタトゥーとなり得る典型的な6種類の例を詳しく解説します。 それぞれの種類を知ることで、自分自身のデジタルタトゥーのリスクを軽減できます。

個人情報

「個人情報」には、名前、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日など、個人を特定できる情報全般が含まれます。

悪意のある第三者がこれらの情報を悪用することで、個人の居場所の特定や、性別、年齢、職業などの個人情報の把握が可能となり、犯罪や迷惑行為に巻き込まれるリスクが増大します。

個人情報がデジタルタトゥーとなる典型的なケースには、SNSのプロフィールへの個人情報の掲載や個人を特定できる画像などの投稿による情報流出が含まれます。

これらの情報が一度インターネットで拡散してしまうと、検索エンジンにインデックスされ、第三者に無断で使用されることがあり、元のコンテキストから切り離されて意図しない方法で利用されることがあります。

SNSなどで不適切な発言

SNSなどのプラットフォームは、ユーザーがリアルタイムで自由に意見や感想を共有できるため、日々の出来事から重要な社会問題に至るまで様々なトピックが投稿されています。

しかし、この自由度の高さが時に問題を引き起こすこともあります。特に内容が不適切である場合、一度投稿が拡散されると、短時間で大きな反響を呼び、「炎上」と呼ばれる現象を引き起こすことがあります。炎上が起こると、その投稿はさらに多くの人々に広がり、批判的なコメントが集まり、メディアの注目を集めることになります。これにより、デジタルタトゥーとして残るリスクが高まるでしょう。

投稿者が自らの発言を後悔し、投稿を取り消すケースも多いですが、インターネットの性質上、一度公開された情報は完全に消去することは極めて困難です。スクリーンショットなどで第三者がその内容を保存し、消去した後も拡散される可能性があります。このようにして、元の投稿はデジタルタトゥーとして永続的に残り、投稿者の名声やキャリアに長期的なダメージを与えることになります。

不適切な行為(悪ふざけ・いたずら)

SNSの普及により、多くのユーザーが日常の瞬間をリアルタイムで共有していますが、その中には不適切な行為や悪ふざけを含む動画や画像の投稿も見られます。これらの投稿はしばしば「バカッター」と呼ばれ、社会問題になるケースが増えています。

例えば、アルバイトスタッフが行う悪ふざけや、店頭の食品をいじる行為などがあります。投稿者はこれをSNS上で仲間内に向けたジョークと捉えているかもしれませんが、これらの画像や動画などがSNSで拡散されると、企業のブランドの品位を損ね、他人に不快感を与えるだけでなく、法的な問題を引き起こすリスクも伴います。実際、このような行為が公になった場合、関連する企業や個人から高額な損害賠償を請求される可能性が高いです。

SNS上での悪ふざけや不適切な行為に関する画像は瞬時に広範囲に拡散されるため、一度投稿された画像はデジタルタトゥーとして残ることとなり、簡単には消去できません。このため、投稿する前にその内容がどのような影響を及ぼすかを慎重に考えた方が良いでしょう。

アルバイト従業員が悪ふざけにより不適切な行動を行い、その行動が公になることで雇用主である企業の信用やイメージを大きく損なう現象を「バイトテロ」と言います。

バイトテロについて詳しく知りたい方は下記の記事がおすすめです。

リベンジポルノ

リベンジポルノは、破綻した恋愛関係や結婚の終焉などが原因で、復讐や嫌がらせの目的のため、元交際相手や配偶者によって、互いの同意のもとで撮影された性的な画像や動画が、本人の意向に反してインターネットで公開されることをいいます。この行為は、被害者に甚大な精神的ダメージを与え、個人のプライバシー侵害という重大な問題を引き起こします。
2014年には、「リベンジポルノ防止法」が制定されました。この法律は、性的な内容を含む画像や動画を無断でアップロードする行為を禁止し、違反者に法的な罰則を科すことで被害者を保護することを試みています。しかしながら、被害件数は増加傾向にあります。

さらに、性的な内容のメッセージを強要する行為や、性的な内容の無断撮影は「デジタル性暴力」とも呼ばれています。

犯罪歴や逮捕歴

インターネットやSNSの普及により、逮捕歴や犯罪などの情報が広く公開されるようになりました。特に逮捕時の情報が裁判の結果に関わらず、広く拡散されると、デジタルタトゥーとして残り続けることがあります。

逮捕された際に不起訴となったケースでも、その事実が独り歩きし、しばしば社会からの偏見や誤解を招く原因になります。さらに、過去に犯罪を起こし、適切に罰を受けて社会に復帰した人々にとっても、犯罪歴や逮捕歴がインターネット上にデジタルタトゥーとして残ることは、就職活動や住宅の購入、さらには社会的な関係の構築において大きな障壁になる可能性が高いです。

誹謗中傷やデマなど悪意のある内容

デジタルタトゥーの中でも特に深刻な影響を及ぼすのが、誹謗中傷やデマといった悪意のある内容です。これらは、意図的に他人の評判を傷つけるためにインターネット上で拡散されることがあり、一度インターネットに掲載されるとその情報は迅速に拡散され、削除が困難になることが多いです。匿名だからといって何を言っても許されるわけではなく、その言動は長期的にインターネット内に残り続けるため、加害者だけでなく被害者にも重大な影響を及ぼします。

誹謗中傷やデマがデジタルタトゥーとして残ると、その情報はインターネットを通じて何度も拡散され、時間が経過しても簡単には消えません。一度公開された悪意あるコンテンツは、検索エンジンによって繰り返し引き出され、被害者の名誉や社会的評価を永続的に損なう可能性が高いです。

デジタルタトゥーが及ぼす危険性とは?

デジタルタトゥーが及ぼす危険性とは?

デジタルタトゥーは、インターネット上に残された情報が個人に様々な影響を及ぼすものです。一度SNSなどで拡散された内容は簡単には消えず、長期にわたって個人の生活に大きな危険性をもたらすことがあります。

以下では、デジタルタトゥーがもたらす危険性について解説します。これらのリスクは、個人だけでなくその家族にも及び、社会生活の様々な局面で問題を引き起こす原因になることがあります。

就職・転職時のネガティブな評価を受けやすい

就職や転職の過程で、デジタルタトゥーは候補者の評価に大きな影響を与えることがあります。現在、多くの企業は採用プロセスの一環として、候補者の人柄や能力をより正確に知るために広範囲にわたる情報を収集しています。この情報収集の中で、デジタルタトゥーが重要な判断材料となることがあるのです。特に採用候補者の過去の問題行動や犯罪歴が企業によって敬遠される原因になります。

企業はリスク管理の観点から、企業のイメージや職場環境に悪影響を及ぼす可能性のある人物の採用を避けるためにデジタルタトゥーのある候補者を慎重に評価します。

解雇・社会的な孤立を引き起こす

企業は自社のブランドを守るために、従業員が社会の規範や企業の倫理規定に反した行動をとったと判断した場合、厳しい対応をすることが多いです。
不適切な行動や発言が公になった場合、企業はその従業員を解雇することで他の従業員や顧客への責任を果たそうとします。問題が特に重大であると判断された場合、企業は法的手続きを進め、損害賠償を求めるなどして責任を追及するでしょう。

デジタルタトゥーは職場内外で信頼を失い、社会的な孤立につながることがあります。同僚や上司から信頼を失うと、日常のコミュニケーションやチームワークが困難になり、結果として仕事を失うリスクも高まります。

メンタルヘルスへの悪影響

デジタルタトゥーが個人のメンタルヘルスに与える悪影響は、しばしば深刻で長期的なものとなりがちです。インターネットに残された不適切な情報や画像、特に個人が望まない形で拡散された内容は、その人の自尊心や社会的評価に直接影響を及ぼし、精神的なストレスや不安が増大します。

さらに深刻な場合、自己のコントロールを失ったと感じることが、抑うつや不安障害を引き起こす可能性があります。

個人情報が特定犯罪に巻き込まれやすくなる

インターネット上で公開された個人情報が特定の犯罪に巻き込まれるリスクは、デジタルタトゥーがもたらす懸念の中でも特に重要です。個人情報の漏洩は、盗難や詐欺、さらには身体的な危害を伴う犯罪へとつながるリスクを高めます。

また、個人の住所や連絡先が公開されることで、ストーカー被害に遭う危険性も高まります。

入居審査の際にマイナスポイントになることがある

デジタルタトゥーは、住宅の入居審査においてもマイナスポイントとなる可能性があります。これは、家主や不動産管理会社が入居希望者の信頼性や過去の行動を知るために、インターネットで公開されている情報を調査することがあるためです。特に、SNSやブログでの過去の発言や行動が入居審査に悪影響を及ぼすことがあります。

例えば、他人を攻撃するようなコメントや、違法行為に関与していることを示唆する画像、過去に拡散され炎上した投稿があると、入居希望者が信頼できない人物であるという印象を与えかねません。

家族にまで被害を及ぼすことがある

デジタルタトゥーによって個人の情報が公開されると、その人だけでなく家族の情報も無断で拡散されることがあります。例えば、家族の誰かが過去に犯罪に関与していたという情報が公開されると、他の家族もその影響を受け、社会的な信用を失う可能性が高いです。

さらに、家族の名前や住所、画像がインターネットに晒される危険もあります。

【トラブルになる前に】デジタルタトゥーの具体的な対策

【トラブルになる前に】デジタルタトゥーの具体的な対策

一度インターネットで公開された情報がデジタルタトゥーとして残った場合、個人の評判や将来の機会が脅かされることがあります。しかし、適切な対策を講じることで、デジタルタトゥーによるリスクを大幅に軽減できます。ここでは、デジタルタトゥーから自分を守るための基本的な対策を紹介し、不必要なトラブルを未然に防ぐ方法をお伝えします。

個人を特定できる投稿をSNSなどで発信しない

SNSなどの投稿において、個人を特定できる画像や動画投稿などを避けることは極めて重要です。特に、名前、住所、電話番号、勤務先などの情報は思わぬ形で個人が特定される原因となり得ます。そのため、プロフィール情報の設定やSNSの投稿を行う際には、そのリスクをしっかり理解し、慎重に行うことが重要です。

また、定期的に自身のSNSのプロフィールや過去の投稿を見直し、個人を特定できる情報が含まれていないか見直すことが推奨されます。意図せず公開してしまった個人情報がある場合は、速やかに消すことが望ましいです。

位置情報をオフにする

SNSや他のアプリは位置情報の設定を求められることがありますが、ユーザーが気付かないうちにこれが有効になっていることがあります。位置情報の共有は、個人のプライバシーを著しく侵害するリスクを伴い、不用意に公開された場合、安全上の問題を引き起こすリスクが高まります。

写真を撮る時やSNSに投稿する時には、スマートフォンの位置情報をオフにすることが重要です。位置情報から撮影場所が特定されると、画像や動画から勤務先や学校などの私的な場所が公開されることになり、個人が特定されるリスクが高まります。

SNSを閲覧できる人を限定する

プライベートな情報を投稿する場合、アカウントに鍵をかけることで承認したユーザーのみが内容を見ることができる設定にすることが効果的です。

SNSによっては公開範囲を「公開」「友達のみ」「カスタム」などに設定できます。
個人情報を守るためには、「友達のみ」やさらに限定的な「カスタム」設定を選ぶことが推奨されます。

他人を誹謗中傷する投稿をしない

SNS上の誹謗中傷は、対象者に深刻な精神的ダメージを与えるだけでなく、名誉毀損罪で刑事処罰を受けるリスクや、民事上の損害賠償請求を提起されるリスクも伴います。これが一般に知られると、自身の評判を失うだけでなく、メディアに取り上げられた場合は名前などが公にされる可能性もあります。そのため、SNSでコメントを行う際は、他者を尊重し、建設的な対話を心がけることが重要です。
感情的な状態でSNSに誹謗中傷的な投稿をすると、不適切な発言が拡散され、デジタルタトゥーとして残り、後で後悔することがあります。投稿する前に一度立ち止まり、内容を冷静に見直すように心掛けましょう。

誰かを不快にさせる投稿をしない

SNSでの不適切な投稿は、誰かを不快にさせるだけでなく、投稿者自身の評判や将来に悪影響を及ぼしかねません。特に最近、「バカッター」と呼ばれる悪ふざけの画像や動画がアップロードされると、すぐに拡散されて炎上するケースが増えています。

SNS上での投稿は不特定多数の人々に閲覧されます。誰かを不快にさせる行為を避けるだけでなく、投稿内容が他者に混乱や誤解を招かないか、冷静に判断してから投稿することが重要です。

デジタルタトゥーを削除する方法

デジタルタトゥーを削除する方法

デジタルタトゥーは一度インターネット上に拡散されると、削除が困難で長期間にわたって影響を及ぼす可能性が高いです。しかし、不適切または望ましくない情報がインターネットにある場合、削除する方法はいくつか存在します。
ここでは、個人が自力で情報を消す方法から、専門家や法的手段を利用する方法まで、デジタルタトゥーを削除するための複数のアプローチを紹介します。

可能であれば自分で削除

不適切な内容を投稿してしまった場合は、即座に削除することを推奨します。長期間インターネットで公開されていると、予期せぬ形で拡散される可能性があります。しかし、自分の投稿を消しても、既に他者に共有されている情報を完全に消すのは難しいです。問題が発生した際に投稿を削除することが、「問題を隠蔽しようとしている」と受け取られ、さらなる問題を招くこともあるため、削除する際にはこのリスクも考慮した方が良いでしょう。

サイト管理者に削除依頼

デジタルタトゥーとして掲示板や口コミサイトなどの投稿がある場合、その削除をサイト管理者に依頼することが可能です。多くのサイトでは、ユーザーが問い合わせやフィードバックを送れるように、問い合わせ機能を設けています

ただし、サイト管理者によっては、問い合わせに対応しない場合もあります。このような状況では、法的アドバイスを求めるなど、さらなる行動が必要になります。

法的手段を用いてデジタルタトゥーを削除

デジタルタトゥーを自分で削除できない場合、法的手段が有効な選択肢となることがあります。特に名誉毀損やプライバシー侵害に関する内容の場合、インターネットに関係する法律に精通した弁護士への相談が推奨されます。

警察に相談

インターネットでの誹謗中傷や個人情報の漏洩は犯罪に該当する可能性があるため、警察への相談が推奨されます。問題の内容を証明するため、スクリーンショットやメッセージのログ、その他の証拠を事前に集めておくと良いでしょう。また、誹謗中傷や個人情報の流出など、具体的な被害の状況を明確に示すための準備をしておくと、相談がスムーズに進みます。

専門の業者に依頼

多くの業者は顧問弁護士と連携しており、必要に応じて法的手続きを進めることが可能です。無料で初期相談に応じる業者も多いため、まずは問題になっている内容を相談しても良いでしょう。

まとめ

デジタルタトゥーは、インターネットの普及に伴い増加しています。個人情報や不適切な投稿が一度SNSやインターネット上に拡散されると、それを削除することが非常に困難になることが多いため、対策はとても重要です。特に個人を特定できる画像や動画が公開されると、それらが悪意ある第三者によって悪用されるリスクが高まります。例えば、住所や職場が特定されてしまうと、実際の生活においてストーカーや嫌がらせ、そして場合によっては物理的な危害を被る可能性も否定できません。

SNSで投稿を行う際は、その内容が将来にわたって影響を及ぼす可能性があることを常に心掛けることが重要です。

デジタルタトゥーは自分で削除できないことが多いので、弁護士に助言を求めることが推奨されます。適切な法的手続きにより問題解決の可能性が高まります。

また、脅迫、ストーキング、リベンジポルノなど犯罪に当たる可能性がある場合は、警察に助言を求めることも大切です。

デジタルタトゥーの危険性を深く理解し、対策方法を身につけることで、安全で健全なインターネット利用を心がけましょう。

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