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侮辱罪で警察は動く?|誹謗中傷の被害相談と弁護士ができる対応を解説

<この記事を監修した弁護士>

モノリス法律事務所 代表弁護士
河瀬 季(かわせ とき)

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SNSやネットの誹謗中傷の被害が社会問題化するなか、「侮辱罪で警察は動くのか」「どのような手続きが必要なのか」といった相談が増えています。

ネット上の誹謗中傷は、内容によって名誉毀損罪に成立することもあれば、具体的な事実の摘示を伴わない侮辱罪が成立することもありますが、いずれにおいても警察がネットでの投稿について捜査を行うかどうかは、投稿の中身や態様、継続性、公然性、証拠の有無などの事情を踏まえて総合的に決まります

また、誹謗中傷の被害に直面した際にも、どの時点で弁護士に相談すべきか、どのような手段を取るべきか迷うケースも少なくありません。

本記事では、名誉毀損罪と侮辱罪の違いを整理したうえで、侮辱罪において警察が動きやすいケース・動きにくいケースを解説し、誹謗中傷された際に取るべき対処方法について解説します。

侮辱罪とは?

侮辱罪は、事実を摘示せずに、公然と他人を侮辱することでその名誉を傷つけた場合に成立する犯罪であり、刑法第231条に規定されています。

ここでいう「侮辱」とは、具体的な事実を示さずに、社会的評価を低下させるような発言や投稿などの表現そのものを指します。

また、「公然」とは、不特定又は多数の人が認識できる状態をいい、SNSやネットのように第三者が閲覧し得る場での投稿は、侮辱罪が成立する要件を満たし得ます。

SNSやネットでの誹謗中傷の被害が増える中、このような要件を満たす表現について、侮辱罪の成立が問題となる事例も増えつつあります。

侮辱罪が成立する場合、刑事手続で処罰の対象となり得ます。また刑事とは別に、民事上の不法行為として慰謝料請求を検討できることもあります。

「侮辱罪」と「名誉毀損罪」の違い

「侮辱罪」と「名誉毀損罪」はどちらも相手の名誉を傷つける行為ですが、両者の大きな違いは事実を示しているかどうかにあります。

侮辱罪は、ネットやSNSなどで具体的な事実を指摘せずに、抽象的な表現によって相手の社会的評価を低下させる行為を処罰対象とする犯罪です。たとえば、「無能だ」「最低の人間だ」といった表現は、事実の指摘を伴わず、人格そのものを否定する内容であるため、公然性が認められれば侮辱罪が成立する可能性があります。

一方、名誉毀損罪は、ネット上の投稿などで具体的な事実を示すことにより、相手の社会的評価を低下させる行為を対象とする犯罪です。「会社の金を横領した」「学校で問題行動を起こした」など、真偽を問わず事実を示す形で社会的評価を下げる表現は、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

名誉毀損罪は、事実の真偽にかかわらず、公然と事実を摘示して社会的評価を低下させれば、構成要件上は犯罪として成立し得ます。
もっとも、ネットの投稿であっても、公共の利害に関する事実で公益目的があり、真実性(または真実と信じる相当の理由)が認められる場合などは、刑法230条の2により処罰されないことがあります。

侮辱罪 名誉毀損罪
事実の摘示 なし あり(事実の真偽は問われない)
刑罰の重さ 侮辱罪:1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、拘留、科料(改正後) 名誉毀損罪:3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金
慰謝料相場 比較的低額にとどまる傾向 侮辱罪より高額になりやすい傾向

このように、ネット上の誹謗中傷においても、侮辱罪は主に人格への抽象的な攻撃を対象とする犯罪であるのに対し、名誉毀損罪は、具体的な事実の摘示によって相手の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪であり、この点でより重く扱われます。

刑罰についても、侮辱罪が成立した時と比べ、名誉毀損罪が成立した際のほうが処罰は重く、法律上もより厳しく取り扱われています。

侮辱罪と名誉毀損罪の犯罪の違いについて、より詳しく解説したこちらの記事も参考にしてください。

侮辱罪で警察は動く?動くケースと動かないケース

結論から言うと、侮辱罪について警察が必ずしも捜査に着手するとは限りません。

誹謗中傷の内容によっては、侮辱罪が成立するか、あるいは名誉毀損罪が成立するかが問題になることもありますが、いずれにおいても、警察が刑事上の犯罪として捜査を行うかどうかは、個々の事案における事実や状況を踏まえて判断されます

侮辱罪は軽微な表現行為と評価されることも多く、単発的な発言や証拠が不十分なケースでは、警察が相談のみにとどめることも多く見られます。

一方で、侮辱行為に悪質性や継続性が認められ、侮辱罪の成立可能性が高く、捜査の必要性があると警察が判断した場合には、被害届の受理や捜査につながることもあります。

なお、「警察が動く」といっても、相談の受理や助言にとどまる場合から、被害届の受理、告訴の受理、捜査着手まで段階があります。警察は、侮辱罪や名誉毀損罪が成立し得るかどうかを含め、投稿の中身、態様、状況、証拠の有無などを踏まえて、捜査を行うかどうかを総合的に検討します。

ここでは、侮辱罪が成立する可能性がある事案の中で、警察が実際に動きやすいケースと、捜査に至りにくいケースについて解説します。

侮辱罪で警察が動きやすいケース

侮辱罪について警察が捜査を行うかどうかは、ネットやSNSなどにおける投稿の表現や態様から見て、個人間のトラブルを超え、刑事上の犯罪として看過できないと評価されるかどうかによって左右されます。

誹謗中傷の内容によっては、侮辱罪ではなく名誉毀損罪に該当する可能性もありますが、いずれの場合であっても、発言や投稿の性質が重要なポイントになります。

特に、同一人物による侮辱的な発言や投稿が繰り返されているなど、継続性が認められるケースでは、悪質性が高いと評価されやすくなります。

また、ネットやSNSなどの投稿が強い人格否定を含み、被害者に与える精神的苦痛の程度が大きいと判断できる場合や、不特定多数が閲覧可能な場で行われている場合も、警察が関与を検討する要素となります。SNSやネットなど、拡散性の高い媒体での侮辱行為は、公然性の要件を満たし、侮辱罪が成立しやすい点も特徴です。

さらに、スクリーンショットや投稿URL、書き込み日時、アカウント情報などの客観的な証拠が十分にそろっている場合には、侮辱罪の成立の有無を判断しやすくなり、事実関係の確認が容易となり、警察が相談のみにとどまらず、被害届の受理や捜査を検討する可能性が高まります。

侮辱罪で警察が動きにくいケース

侮辱罪において警察が操作に踏み切りにくいのは、発言や投稿の内容や状況から見て、刑事事件として取り扱う必要性が低いと評価される場合です。

たとえば、感情的な言い争いの中で発せられた発言や、表現の内容から精神的苦痛の程度が軽微で、投稿による被害の影響が限定的と考えられるケースについては、侮辱罪の成立が直ちに認められないことも多く、警察は当事者間のトラブルとして整理し、相談にとどまることが一般的です

また、侮辱的と受け取られ得る表現であっても、その前後の文脈や表現方法から、意見や批評の範囲にとどまると解釈できる場合や、誰を対象とした発言なのかが不明確な場合には、公然性や侮辱性の判断が難しくなります。その結果、刑事事件として扱うことが適切でないと判断されることがあります。

さらに、スクリーンショットや投稿URLなどの証拠が十分にそろっていない場合や、発言がすでに削除されており事実関係の確認が困難な場合も、警察が捜査を行いにくくなります。

警察は、投稿の表現や影響の程度、証拠の有無などを総合的に踏まえ、刑事上の犯罪として捜査に進むべきかどうかを検討しています。

侮辱罪が成立しやすい誹謗中傷の例

誹謗中傷と呼ばれる行為のすべてが侮辱罪に該当するわけではありませんが、ネットやSNSなどで具体的な事実を示さず、相手の人格や人間的価値そのものを否定する表現については、侮辱罪が成立する可能性があります。

特にネットの投稿において、相手を見下す表現や蔑視的な言葉を用いて人格そのものを否定する発言は、侮辱行為として問題となりやすい傾向があります。

侮辱罪に該当しやすい誹謗中傷の例▼

  • SNSやネットで特定の個人に対し、「あいつは無能」「価値がない」「人として終わっている」など、根拠となる具体的な事実を示さずに人格全体を否定する投稿
  • ネットの掲示板やコメント欄において、特定の個人を指して「気持ち悪い」「人間失格」などの言葉を繰り返し書き込む
  • SNSやネットで、特定の人物を名指しし、「笑える存在」「生きている意味がない」などと嘲笑する投稿
  • 相手の発言や行動に対する説明や根拠を示さず、「頭が悪すぎる」「話す価値がない」など、一方的に見下す表現を投げつける
  • 第三者が閲覧するネットなどの環境で、特定の個人に対し、「存在自体が迷惑」「社会の不要物」などと否定する表現を投稿

これらはあくまで一般的な例であり、実際にネットの表現が侮辱罪として成立するかどうかは、表現や文脈、公然性などを踏まえて個別に判断されます。

一方で、誹謗中傷の中には、人格を抽象的に貶める侮辱罪ではなく、具体的な事実を示すことで社会的評価を低下させる名誉毀損罪として問題となる場合もあります。

たとえば、犯罪行為や不正行為を行ったかのような事実を示して投稿する行為は、表現の仕方によっては名誉毀損罪が成立する可能性があります。

誹謗中傷されたときの警察への相談の流れ

誹謗中傷の被害に遭った場合、警察に相談することは可能ですが、いきなり被害届や告訴に進む必要があるとは限りません。誹謗中傷の内容によっては、侮辱罪に当たる場合もあれば、名誉毀損罪として問題となる可能性もあり、多くのケースでは、まず事実関係を整理し、必要な証拠をそろえたうえで相談を行うことが現実的な選択となります。

警察は、ネットやSNSなどの投稿内容や状況、証拠の有無などを踏まえて、侮辱罪や名誉毀損罪として捜査に進むかどうかを検討するため、適切な手順を踏むことで、相談が円滑に進みやすくなります。

ここでは、誹謗中傷を受けた際に警察へ相談するまでの流れと、相談前に準備しておくべきポイントについて解説します。

まずは「証拠集め」から始める

誹謗中傷の被害について警察に相談する際は、ネットの投稿や状況を確認できる証拠を確保しておくことが重要です。侮辱罪に該当するかどうか、また警察が捜査に進むかどうかは、発言の表現だけでなく、誹謗中傷の被害が実際に発生していたことを示せる証拠の有無によって左右されます。そのため、被害に気づいた時点で、できるだけ早く事実関係を裏付ける証拠を保存しておきましょう。

該当するネットやSNSの投稿、ネット掲示板のコメントのスクリーンショットを取得し、文章だけでなく、投稿日時、URL、アカウント名(ユーザーID)など投稿に関する事実が分かる情報を含めて記録します。複数回にわたる投稿がある場合は、継続して行われているという事実が分かるように時系列で保存しておくと状況を説明しやすくなります。投稿が削除される可能性もあるため、証拠は早めに確保することが大切です。

証拠が不十分な場合、警察が事実関係を確認しにくく、相談にとどまることもあります。

警察に相談する

証拠を整理したら、次のステップとして警察への相談を検討します。誹謗中傷に関する相談は、いきなり被害届を提出する必要はなく、まずは事実関係を説明する「相談」から始めることが多いです。相談の段階では、当該行為が侮辱罪や名誉毀損罪として刑事事件の対象となり得るかどうかを検討するための情報整理が行われるため、冷静に状況を伝えることが重要になります。

相談先としては、交番でも可能ですが、最寄りの警察署の生活安全課など、ネットのトラブルや人身被害を扱う部署に相談した方が、話がスムーズに進みやすい傾向があります。相談時には、保存したスクリーンショットや投稿URL、発言の経緯を時系列でまとめたメモを提示すると、警察側が状況を把握しやすくなります。

警察は、行為の表現や継続性、公然性、証拠の有無などの客観的な事実を踏まえ、侮辱罪または名誉毀損罪として取り扱う余地があるかどうかを検討しつつ、被害者の意思も考慮したうえで、刑事事件として扱うか、相談の段階にとどめるかを総合的に評価します。

この段階で必ず捜査が始まるわけではありませんが、相談の経緯や説明事項が記録として残ることで、今後被害が拡大した場合や、被害届・告訴に進む際の参考資料となることもあります。

まずは事実関係を整理したうえで、適切な窓口に相談することが重要です。

被害届を提出する(任意)

警察への相談後、事案の事情や証拠の状況によっては、被害届の提出を検討することになります。被害届は、犯罪被害が発生した事実を警察に正式に申告する手続きですが、提出は任意であり、必ず行う必要があるものではありません。

被害届を提出することで、警察は被害の発生を公式に把握することになりますが、侮辱罪の場合、捜査や処罰に進むかどうかは、原則として被害者による告訴の有無も踏まえて判断されます。ただし、被害届が受理された場合でも、直ちに捜査や処罰に進むとは限らず、警察は行為の悪質性、証拠の有無などを踏まえて、捜査に進むかどうかを判断します。

被害届の提出にあたっては、これまでに収集した証拠に加え、被害に至った経緯や業務・生活への影響、精神的苦痛の程度などについて、整理された説明が求められます。状況によっては、追加資料の提出や事情聴取を求められることもあるため、手続き上の負担を考慮する必要があります。

被害届の提出を検討する際には、当該行為が侮辱罪・名誉毀損罪のいずれとして整理され得るかも含め、今後の方針を見据え、弁護士と相談しながら進めることで、手続きを円滑に進めやすくなる場合もあります

告訴状を提出する場合の流れ

被害届の提出後、事案の性質や被害の程度によっては、告訴状の提出を検討するケースもあります。告訴状とは、被害者が加害者の処罰を求める意思を明確に示す正式な手続きであり、被害届とは異なり、刑事責任を追及する意思表示となります。なお、侮辱罪は親告罪であるため、刑事責任を追及するには、原則として告訴が必要となります。

告訴状を提出するには、侮辱行為の内容や発生状況、被害の経緯を整理した書面を作成し、通常は警察署を通じて提出します(場合によっては検察に直接提出することもあります)。この際、行為が侮辱罪に該当すると考える理由や、被害の具体的な影響についても記載する必要があります。証拠内容や整理状況によっては、警察が告訴状の受理を慎重に検討することもあります。

告訴状が受理された場合、警察は捜査に着手することが一般的であり、関係者への事情聴取や証拠収集が進められます。ただし、告訴状を提出したからといって、必ず起訴や処罰に至るわけではなく、最終的な結論は捜査結果や検察の判断に委ねられます。

告訴状の作成や提出には専門的な知識が求められるため、実務上は、弁護士に相談しながら進めることで、手続きの正確性や受理の可能性を高めやすくなります。

弁護士に相談した方が良いタイミング

ネットやSNSで誹謗中傷の被害に遭った場合、必ずしも最初から弁護士に相談する必要があるとは限りません。しかし、警察への相談だけでは解決に向けた進展が見込めない場合や、当該行為が侮辱罪として整理されるのか、名誉毀損罪として問題となるのかといった点を含め、刑事・民事のどちらで進めるべきか迷う場面では、早い段階で弁護士に相談することが有効となる可能性があります。

特に、ネット上の誹謗中傷において、刑事手続と民事手続のいずれを選択すべきか整理が難しい場合や、相手方との交渉、証拠の整理、今後の方針を検討する必要がある場合には、侮辱罪・名誉毀損罪の区別も含めた専門的な助言が求められます。

ここでは、誹謗中傷に関するトラブルについて、どのような状況で弁護士への相談を検討すべきか、その目安となるポイントを整理します。

警察が動かないケースでも弁護士なら対応できる場合がある

誹謗中傷の内容や証拠の状況によっては、警察に相談しても捜査に進まないことがあります。しかし、そのような場合であっても、法的な手段がすべて尽きるわけではありません。刑事事件として立件に至らない場合でも、民事上は不法行為として損害賠償請求や削除請求など、別の手段で解決を図れる可能性があります。

たとえば、ネットの投稿について侮辱罪としての立件が難しい場合でも、内容や態様によっては、民事上の不法行為として損害賠償請求を検討できることがあります。たとえ警察による捜査に進まない場合でも、民事上の手続として、弁護士を通じて発信者情報の開示(発信者情報開示請求等)を検討し、投稿者の特定を試みることは可能です。

もっとも、開示が認められるかどうかは、投稿の中身や証拠の状況などを踏まえて個別に判断されます。

このように、警察と弁護士では役割や手段が異なります。侮辱罪や名誉毀損罪として警察が動かないからといって問題が解決できないわけではなく、状況に応じて弁護士に相談することで、現実的な解決策を見出せる可能性があります。刑事・民事のいずれが適切かを含め、専門的な視点から整理したうえで対応を検討することが重要です。

相手の特定(発信者情報開示請求)が必要なとき

誹謗中傷がインターネットやSNSで行われている場合、投稿者が匿名であることも多く、相手の身元が分からないケースが少なくありません。このような場合、当該行為が侮辱罪や名誉毀損罪として問題となり得る内容であっても、警察への相談だけでは相手を特定できないこともあり、弁護士を通じて法的手段として発信者情報開示請求を検討する必要があります。

発信者情報開示請求とは、SNS事業者や掲示板運営者、通信事業者(プロバイダ)などに対し、投稿者に関する情報の開示を求める手続きです。一般に、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性がある投稿であっても任意の開示が得られない場合は、弁護士が関与したうえで裁判所を通じた法的手続により進めることになります。

実務上は、(事案や手続類型にもよりますが)投稿サービス側からIPアドレス等の情報を得たうえで、通信事業者に対して契約者情報の開示を求めるなど、段階的に進めることが多いです。

請求が認められるかどうかは、投稿内容が権利侵害に当たるかどうかに加え、侵害の明白性や開示の必要性、証拠の十分性などを踏まえて判断されます。

この手続きには専門的な知識や実務的な判断が求められ、タイミングを逃すと、事業者側のログが保存期間の経過等により確認できなくなるおそれがあり、加害者の特定が困難になる場合もあります。そのため、相手の特定が必要と考えられる場合には、早い段階で弁護士に相談し、証拠の整理や手続きの進め方について助言を受けることが重要です。

精神的苦痛で慰謝料を求めたいとき

誹謗中傷によって強い精神的苦痛を受けた際に、刑事責任の追及とは別に、民事上の損害賠償として慰謝料を請求できる可能性があります。警察が侮辱罪としての捜査に至らないケースであっても、民事上は不法行為が成立すると判断されることもあり、慰謝料請求の余地が残される可能性があります。

慰謝料請求が認められるかどうかは、発言内容の悪質性や継続性、投稿媒体の性質、被害の程度などを踏まえて判断されます。特に、人格を否定する表現が繰り返されている場合や、日常生活や業務に支障が生じている場合には、精神的苦痛や損害の有無が認められる可能性が高まります。

もっとも、慰謝料請求を行うためには、誹謗中傷の内容や経緯を示す証拠の整理に加え、不法行為の成立(違法性や因果関係など)を示せるかどうかも重要になります。相手方との交渉や手続きが必要となるほか、請求額は事案によって幅があるため、進め方も含めて慎重な判断が求められます。精神的苦痛を理由に慰謝料請求を検討する場合には、弁護士に相談し、見通しや方針を確認したうえで進めることが現実的です。

証拠の整理や交渉を任せたい場合

誹謗中傷は、証拠の収集そのものだけでなく、それをどのように整理し、どの場面でどの証拠を用いるかが重要になります。投稿内容や経緯を把握できていない場合、警察や相手方とのやり取りがスムーズに進みにくくなることがあります。

また、相手方への連絡や交渉を被害者自身が行うことは、精神的な負担が大きいだけでなく、進め方によっては状況を悪化させてしまうリスクもあります。感情的な応酬や不用意な発言が、新たなトラブルにつながる可能性も否定できません。

このような場合には、証拠や事実の精査、法的評価、相手方との交渉を弁護士に任せることで、対応を冷静かつ客観的に進めやすくなります。手続き全体を弁護士に委ねることで、被害者自身の負担を軽減しつつ、状況に応じた現実的な解決につながる可能性を高めることができます。

弁護士ができる対応や手続き

誹謗中傷の被害について弁護士に相談した際に、状況に応じてさまざまな法的対応を検討することが可能です。警察対応だけでは解決が難しいケースや、民事・刑事の両面を踏まえた対応が必要な際に、以下のような手続きが選択肢となります。

  • 発信者情報開示請求(IPアドレス・ログ/契約者情報の開示)

    匿名で行われた誹謗中傷について、SNS事業者や掲示板運営者、通信事業者(プロバイダ)などに対し、投稿者の情報の開示を求める手続きです。実務上は、プラットフォーム事業者からIPアドレス等の情報を取得し、その後、通信事業者に対して契約者情報(氏名・住所等)の開示を求めるなど、段階的に進められることが一般的です。ログの保存期間などの制約もあるため、早期の対応と証拠の収集が重要になります。

  • 損害賠償請求(慰謝料請求)

    誹謗中傷によって精神的苦痛を受けた際、民事上の不法行為として慰謝料を請求できる可能性があります。請求の可否や金額の目安は、発言内容や被害の程度、継続性などを踏まえて判断されるため、弁護士が法的評価を行ったうえで進めることが一般的です。

  • 刑事告訴のサポート

    侮辱罪などの刑事責任を追及する場合、告訴状の作成や提出にあたって専門的な知識が求められます。弁護士は、事案が刑事告訴に適しているかの判断を行い、必要に応じて告訴状の作成や警察・検察への対応をサポートします。ただし、告訴が受理されるか、捜査・起訴に至るかは、事案や証拠の有無により判断されます。

  • 示談交渉で早期解決を図る

    裁判や捜査に進む前に、相手方との示談による解決を目指すことも選択肢の一つです。弁護士が代理人として交渉を行うことで、感情的な対立を避けながら、謝罪や金銭的解決を含めた現実的な合意を図りやすくなります。

  • 削除請求(SNS・ネットのブログサイト・動画サイト)

    誹謗中傷の投稿自体を削除するため、運営事業者に対して削除の申立てを行うことも可能です。利用規約や権利侵害の根拠を踏まえ、投稿内容と侵害の態様を明確にして伝えることが重要であり、弁護士を通じて進めることで、手続きや主張を把握しやすくなります。

被害を拡大させないための注意点

誹謗中傷の被害に直面した際、感情的な行動や判断を誤ることで、問題がかえって拡大してしまうケースも少なくありません。適切な手順を踏まずに行動すると、警察や弁護士による対応が難しくなったり、新たなトラブルを招いたりする可能性があります。

ここでは、誹謗中傷への対応を進めるうえで、事実を正確に把握したうえで行動するという観点から、被害をこれ以上広げないために意識しておくべきポイントについてお伝えします。

反論・喧嘩を買わない

誹謗中傷を受けた際、相手の発言に対して反論したり、感情的に言い返したりしたくなる場面もあります。しかし、そのような対応は、問題を解決するどころか、状況を悪化させてしまう可能性があります。やり取りがエスカレートすることで、誹謗中傷が長期化したり、周囲を巻き込むトラブルに発展することもあります。

また、反論の内容によっては、被害者側の発言が新たな侮辱行為や名誉毀損と受け取られるおそれもあります。その結果、立場が逆転し、トラブルの当事者として不利な立場に置かれるリスクも否定できません。

不要な対立を避けることで、被害の拡大を防ぎ、適切な解決につなげやすくなります。

相手に直接連絡しない

誹謗中傷の被害を受けた際には、相手に対して直接連絡を取り、抗議や説明を求めたくなることもあります。しかし、当事者同士での直接的なやり取りは、問題解決につながらないばかりか、状況をさらに悪化させてしまうおそれがあります。

相手に直接連絡を取ることで、感情的なやり取りの応酬に発展したり、新たな誹謗中傷を誘発したりする可能性があります。また、やり取りの内容によっては、被害者側の発言が不適切と評価され、後の警察相談や法的手続きにおいて不利に働くことも考えられます。

誹謗中傷への対応は、状況に応じて、警察や弁護士などの専門機関を通じて進めることも有効です。直接の接触を避け、客観的な立場から整理された手続きを選択することで、不要なトラブルを防ぎ、冷静な解決を図りやすくなります。

まとめ

誹謗中傷が侮辱罪に該当するかどうか、また警察が捜査を行うかどうかは、発言の内容や態様、継続性、公然性、証拠の有無などを踏まえて総合的に判断されます。単発的な発言であったり、証拠が不十分であったりするケースでは、警察が相談の段階にとどめることもあります。

一方で、侮辱行為に悪質性や継続性が認められ、公然性が明確で、被害の影響も大きい場合には、被害届の受理や捜査につながる可能性もあります。そのため、誹謗中傷を受けた際には、まず証拠を適切に保存し、状況を整理したうえで警察に相談することが重要です。

また、警察が動かない状況であっても、弁護士を通じて発信者情報開示請求や損害賠償請求、示談交渉など、別の解決手段を検討できるケースがあります。刑事・民事のいずれが適切か判断が難しかったり、手続きを円滑に進めたい時には、早い段階で専門家に相談することが有効です。

誹謗中傷に直面した際には、感情的な反論や直接的な接触を避け、冷静に対応を進めることが、被害の拡大を防ぎ、適切な解決につながります。

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