PRの世界では、どのような戦略を実施すればよいか、多くの担当者がその答えを模索しています。サービスや商品の認知度を高めるための効果的なキャンペーンを作り出すことは容易ではありません。
この記事では、企業の成功したPR事例を紹介し、効果的なPR戦略について解説します。素敵な商品やサービスを多くの人に知ってもらうためには、PRが不可欠です。
情報が溢れる今の時代には、ターゲットになる消費者の心をつかむことが非常に大切です。ここでは、企業の様々な事例を使って、どのようにしてPRが成功につながったかを見ていきます。
PRとは

PR(パブリック・リレーションズ)は、企業や組織が一般の人々や特定のステークホルダーとの関係を構築、維持、向上させるために行う活動のことです。
PRは、広告や直接的なプロモーションとは異なり、主にSNSやメディアを通じて自然な形でサービスや商品の情報が拡散されることを目的としています。
PR活動には以下のようなものがあります。
- メディアリレーションズ
- プレスリリース
- ニュースレターやYouTube動画などのコンテンツ制作
- SNSの投稿
- キャンペーン
PR(パブリック・リレーションズ)は、企業が自ら広告枠を購入して発信する「広告」とは異なり、第三者(メディアやSNS、口コミなど)を通じてサービスや商品の情報を広め、認知度の向上や信頼関係の構築を目的とする活動です。そのため、PRは広告と比べて一般的に顧客に対してより説得力があり、信用されやすいとされています。
PRのメリット・デメリット

PRは企業の信頼性を高め、長期的な企業イメージの向上につながる一方、即効性やコントロールの難しさといった課題もあります。以下でPRのメリットとデメリットをまとめました。
PRのメリット▼
- 信頼性が高い
PRはメディアや第三者を通じて情報が発信されるため、広告よりも客観性があり、顧客の信頼を得やすい。 - 広告費を削減できる
PR TIMESやSNSを利用することで、広告のように多額の費用をかけずにターゲット層への効果的な露出を獲得できる。 - 企業イメージUP
PR活動を通じて、サービスや商品の良いイメージを築くことができ、長期的なブランド価値の向上につながる。
PRのデメリット▼
- 即効性が低い
広告と異なり、PRはターゲットへの認知拡大や企業の信頼性向上に時間がかかるため、すぐに売上に直結しづらい。 - 情報のコントロールが難しい
一度メディアに取り上げられると、ターゲットに伝わる内容を企業が完全に管理することは難しく、意図しない報道になる可能性がある。 - 費用対効果が見えにくい
PR活動の影響は定量的に測定しづらく、投資に対する明確なリターンがわかりにくい。
企業のPRの成功事例10選
企業が市場での存在感を高めるには、戦略的なPR活動が不可欠です。近年、多くの企業がSNSを利用したり、ターゲットに響く話題性のあるキャンペーンを実施して成功を収めています。ここでは、そうした企業のPR成功事例を10個紹介します。
「クルミッ子」のPRの成功事例

株式会社鎌倉紅谷の看板商品「クルミッ子」は、その品質の高さと独自のPR戦略によって、幅広い層から愛されるブランドへと成長しました。
「クルミッ子」は、もともと9月30日を「くるみの日」としてPRを始めましたが、認知が高まるにつれて「クルミッ子の日」として正式に記念日を制定。日本記念日協会に登録したことで、毎年多彩な企画を実施し、ユーザーの関心を高めています。
公式X(旧Twitter)やInstagramを積極的に投稿し、ファンと密接にコミュニケーションを取ることで、SNS上でのエンゲージメントを高めました。特に「#クルミッ子の日2024」などのハッシュタグキャンペーンを実施し、ユーザーが自発的に投稿する仕組みを作りました。
また、記念日や季節のイベントに合わせて、限定デザインのパッケージやノベルティを用意し、新たな顧客層の獲得につなげたのです。
新商品の「ポケットブラウニー」では、発売前にストーリー仕立てのイラストをSNSに投稿し、期待感を醸成しました。ファンの間で「何かが始まる?」という期待が高まり、発売時の注目度を高めることにも成功しました。
以下のポイントが、PRの成功の秘訣と言えるでしょう。
- 記念日を活かし、定期的な話題を提供する工夫
- SNSで顧客との積極的なコミュニケーション
- ストーリーテリングを取り入れた新商品PR戦略
- ファンとのリアルな接点を重視した施策を実施
「おいしい」の先にある気持ちを一番大切に。顧客接点を広げる「クルミッ子」の広報PR|株式会社鎌倉紅谷(2024年10月)
奥伊吹観光株式会社のPR成功事例

関西最大級のスキー場「グランスノー奥伊吹」を運営する奥伊吹観光株式会社は、全国的なスキー人口の減少という厳しい環境の中、2季連続で入場者数25万人超、4季連続で売上高更新という成果を達成しました。その成功の背景には、的確な設備投資とともに、効果的なPR戦略がありました。
スキー人気が低迷する中、同社は施設のハード・ソフト両面での充実を図り、積極的な設備投資をPR TIMESで公開。
ハード面の充実: 「人工造雪機+人工降雪機」の増設、最新エスカレーター導入などにより、安定したゲレンデ環境を確保。
ソフト面の強化: 若年層向けのレンタルウェアの拡充、レストランのリニューアルなど、スキー初心者層の取り込みに注力。
奥伊吹観光株式会社は、PR戦略の核としてプレスリリースの配信を積極的に利用しています。特に、オープン時期や新施設の発表をタイミングに合わせてリリースを計画し、地元メディアだけでなく全国のスキー愛好者に情報を届けました。話題性を意識したタイトルや写真を使い、その拡散力を強化しています。
施設の魅力を最大限に伝えるため、同社はSNS運用やWebサイトを駆使し、特に、シーズン中の天候情報や混雑状況をリアルタイムに配信し、来場のタイミングを見極めやすい環境を整えたことが高評価につながりました。
スキー場のオフシーズンには、広大な敷地を活かしたキャンプ場やアスレチック施設のオープンなど新しい事業を展開し、通年型の集客を目指すPR活動を行いました。
また、スキー場の運営だけでなく、水力発電を活かした環境への配慮をPRの軸に据えています。
PR成功の要因は、以下の点に集約されます。
- 時代の変化に即した設備投資をプレスリリースで配信
- メディアと生活者双方に向けた戦略的な情報発信
- SNSとリアルイベントの組み合わせによる新規層の獲得
- オフシーズンを効果的に使った収益安定化と認知度UP
- 環境への貢献をアピールし、社会的信頼の獲得
ローソンのPR成功事例

ローソンは、XやInstagramなどのSNSを巧みに活かして、顧客とのコミュニケーションを強化することで、サービスの認知度を高め、ファンの獲得に成功しています。特に、Xのフォロワー数は870万人以上(2025年1月時点)と圧倒的な影響力を誇り、日本国内でSNSでのPRに最も成功している企業の一つといえます。
2017年には、Twitter社が発表した「最も使われたハッシュタグランキング」において、ローソンのハッシュタグが複数ランクインしています。また、ローソンは、Instagramを運用して、「インスタ映え」するビジュアル重視のコンテンツを展開し、若年層を中心にファンを獲得しています。
PR成功の要因
- ハッシュタグキャンペーンによる拡散力の最大化
- SNSを活用して、実店舗への誘導を図る施策を実施
幸楽苑ホールディングスのPRの成功事例

幸楽苑ホールディングスは、2018年の大晦日に発表したPR「2億円事件」によって、大きな話題を呼びました。この投稿は、飲食業界の長時間労働や人手不足といった課題に対し、企業として従業員の働き方を改革するという強いメッセージを発信したものです。
幸楽苑は、2019年の元日に全店休業を実施し、売上高2億円の損失を受け入れつつも、「従業員の気持ちを大切にする」という企業姿勢をアピール。このPR戦略は、SNS上で大きな反響を呼び、消費者から多くの支持を集める結果となりました。
SNSでは「これこそ働き方改革!」「こういう企業が増えてほしい」「休み明けに幸楽苑に行こうと思った」など消費者の好意的な反応が広がり、ブランドロイヤルティの向上につながりました。
飲食業界において「長時間労働が当たり前」という風潮の中、幸楽苑は従業員の満足度を高めることで、優秀な人材の確保と定着率の改善にもつながっています。
PR成功の要因
- 「2億円事件」というインパクトのある訴求
- 従業員の働き方改革への本気度のアピール
- SNSを活用した双方向コミュニケーションの強化
株式会社AOKIのPRの成功事例

AOKIが発売した「パジャマスーツ」は、コロナ禍の新しい生活様式に即した商品として、発売から1年半で累計15万着以上の販売を記録し、社会に新たなスーツの概念をもたらしました。この成功の裏には、AOKIの広報チームによる戦略的なプレスリリースの存在があります。
AOKIは、新型コロナウイルスによる生活様式の変化をいち早くキャッチアップし、「自宅でも快適に仕事ができるスーツ」というコンセプトの「パジャマスーツ」を企画。PR戦略では、ユーザーの悩みに寄り添うストーリー性を重視し、共感を呼ぶメッセージを発信しました。
「パジャマスーツ」のプレスリリースでは、ビジュアルを最大限に活用し、商品の特徴や着用シーンが一目で伝わる画像を選定しました。特に、商品名から伝わる「リラックスしながらもフォーマル」というメッセージを的確に伝えるため、実際の着用イメージを強調。
第1弾の発売時に発表したプレスリリースは、「社内外へ最も広く好意的な影響をもたらした」として、プレスリリースアワード2021「インフルエンス賞」を受賞。この賞を通じて、AOKIのPR活動が業界から高く評価されました。
PR成功の要因
- ビジュアルとストーリー性を重視したプレスリリースの作成
- 社会情勢を的確に捉えたタイムリーな情報発信
コロナ禍の大ヒット「パジャマスーツ」を支えた広報。プレスリリースアワード2021受賞にかける想い|株式会社AOKI(2022年7月)
ウィルゲートのPR成功事例
ウィルゲートは、2020年4月に広報チームの体制をリニューアルし、新たなPR戦略をスタートしました。これまで「採用広報」を中心に取り組んでいましたが、事業方針の変更をきっかけに、「会社」「事業」にも注力するPR体制へと進化。PR活動の拡大により、コーポレートサイト経由の受注金額が2倍、新卒・中途採用の自主応募者数が168%増など、目覚ましい成果を上げています。
ウィルゲートのPR戦略は、企業の成長とブランドの確立を目的として、以下の3つの柱を軸に展開されました。
- 会社広報: 企業の認知拡大を目的としたPR活動
- 事業広報: サービスやプロダクトの魅力を伝えることを目的として活動
- 採用広報: 企業文化を発信し、優秀な人材の獲得を目指すことを目的として活動
それぞれ目的が異なった活動をバランスよく実施することで、各ターゲット層へ効果的にアプローチしました。
さらに、X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSを活用し、より多くのユーザーにウィルゲートの情報を届けることを目指し、「Twitterチーム対抗戦」など社員のフォロワー数増加を目的とし、会社全体での発信力強化を推進しました。結果として、3ヶ月間で参加社員の総フォロワー数が5,500人増加し、「ウィルゲート」という言葉を含む投稿が月平均30件から260件に増加しています。
企業の認知度とブランド価値を大幅に上げたPRのポイント
- それぞれ異なる目的で多角的なPR戦略を実施
- PR TIMES、SNS、note、Wantedlyなどを活用し、幅広い層へアプローチ
- 全社的な取り組みとして、SNSなどの発信力の強化
ウィルゲートの“新”広報チーム、開始1年の振り返り(2021年3月)
SmartHRの交通広告のPR成功事例
クラウド人事労務ソフトのサービスを提供する株式会社SmartHRは、2020年4月に実施した広告キャンペーン「ハンコを押すために出社した。」が、「交通広告グランプリ 2021」企画・プロモーション部門で最優秀部門賞を受賞しました。このキャンペーンは、コロナ禍における社会の変化を的確に捉え、人事・労務の課題に対する共感を生むことでSNSで大きな話題となり、PR成功事例の一つとなりました。
キャンペーンは、新型コロナウイルス感染拡大によるテレワークの普及に伴い、多くの企業が直面していた「ハンコや書類のために出社する」という社会課題をテーマに設定。コロナ禍という特殊な状況下であえてオフライン広告を選択することで、効果的なプロモーションを実施しました。
PRの成功要因
- 「ハンコを押すために出社した。」というコピーは、多くのビジネスパーソンの共感を呼び、SNSなどで話題を集めた。
- 通勤者が減少している中でも、ターゲットに適切にリーチするメッセージ設計が高く評価された。
チロルチョコのSNSでの誤解を解消したPRの成功事例
2024年11月、X上で「チロルチョコに虫が入っていた」という投稿が拡散され、一時的に話題となりました。しかし、チロルチョコ公式X(旧Twitter)が迅速かつ的確な対応を行ったことで、消費者の誤解が解消され、ブランドイメージの向上につながるPR成功事例となりました。
異物混入が疑われる投稿が拡散された直後、チロルチョコ公式Xは即座に事実確認と推察を発表しました。投稿内容を否定するのではなく、「該当商品が昨年以前のものと推察される」と冷静にコメントし、購入後の保存状況による混入の可能性を示唆。騒動の最中、チロルチョコはオープンで誠実な情報発信を徹底しました。問題を事実として受け止めつつ、冷静に製造・流通プロセスを説明し、購入後の保管環境の影響についても言及。
投稿者が自身の誤認を認め、該当投稿を削除した後、チロルチョコは迅速に経緯説明を発信。その際、ユーザーを責めることなく、事実関係を分かりやすく説明し、消費者への注意喚起も行いました。
ネット上では、チロルチョコの対応に対して「企業広報のかがみだ」「迅速な対応で素晴らしい」など、といったポジティブな声が多数寄せられました。正確な情報の提供と迅速な対応が消費者から高く評価され、結果として企業の信頼性向上につながりました。
今回のケースは、食品業界における「危機対応時のPR」の成功事例として、他企業にとっても参考となるポイントが多いといえます。
- 迅速な対応力
- 正確な情報をオープンに投稿し、消費者の信頼を維持
- SNSを通じた誠実な対応により企業の好感度が上昇
チロルチョコ「虫混入?」騒動対応が見事すぎた訳(2024年11月)
資生堂のPRの成功事例
資生堂は、2015年にYouTubeで公開した動画「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」によって、世界的な広告賞「ADFEST 2016」においてフィルム部門のゴールド賞を受賞しました。このキャンペーンは、メークの可能性を創造的に表現し、若年層のターゲットに強く訴求した動画の成功事例として広く評価されています。
「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」は、資生堂が「メークの楽しさ」を若い世代に伝えることを目的に制作されました。この動画では、教室にいる女子高生が、実は全員男子高校生であるというサプライズ演出を用いて、メークの力を印象的に表現しています。
動画は、視聴者に「女子高生の美しさ」を見せつつ、最後に全員が男子高校生であることを明かすことで、メークの力を強烈に印象づけました。この驚きの展開が視聴者の関心を引き付け、SNS上での拡散を促進しました。
この動画のPR成功要因
- 驚きと感動を生むクリエイティブなストーリー展開を用いた動画
- SNS上でのリアルタイムなユーザーの反応を活用し、拡散を加速
大塚製薬のPRの成功事例
大塚製薬の栄養補助食品「カロリーメイト」は、単なる商品PRにとどまらず、受験生の「心」に寄り添うメッセージキャンペーンを実施し、多くの若者の共感を呼びました。その代表的な事例が、YouTube動画「拝啓、受験前日の私たちへ」篇です。
このPRキャンペーンでは、受験生自身が未来の自分への応援メッセージをカロリーメイトに書き込み、それが受験前日に届くという体験型のプロモーションを実施。2,500件以上のメッセージが集まり、それを基にした動画が制作・公開されました。
キャンペーンの動画はYouTubeに公開され、受験生やその家族・友人の間で大きな話題となりました。また、SNSを通じて、受験生自身の体験や想いが拡散され、ターゲット層にダイレクトに届く仕掛けが功を奏しました。
PRの成功の要因
- ターゲット層の感情に訴えるストーリー展開を用いた動画
- 実際の受験生のメッセージを取り入れることで、リアルな体験価値を創出。
成功事例から学ぶ効果的なPR

近年、企業のPR(パブリック・リレーションズ)は、単なる商品やサービスの宣伝にとどまらず、ターゲットとなる顧客との信頼関係を築くための重要な手段となっています。多くの企業が、ユーザーの共感を呼ぶストーリーを通じて、ブランドの価値を高めることに成功しています。
企業のPRの成功事例から学ぶポイントは以下の通りです。
- 共感を呼ぶストーリー設計 – ターゲットの心に響くメッセージを発信
- SNSを活用したPR – キャンペーンを活用、リアルタイムな情報や対話を意識した運用
- 定期的な話題作り – 記念日や季節イベントを活用したPR戦略。
- 社会的課題への取り組み – 企業の価値観を明確にし、信頼を獲得。
サービスや商品の認知を高めるPR活動は、SNSの活用した情報発信が重要ですが、それだけではなく、検索エンジンの「サジェスト機能」を活用することも効果的な手段のひとつです。
サジェストとは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンにキーワードを入力した際に、自動で表示される関連ワードのことを指します。この機能を活用することで、ターゲットとなるユーザーへの情報提供を強化し、サービスや商品の認知拡大や購買意欲の促進につなげることもできます。
サジェストを活用したPRについて詳しく知りたい方は下記の記事がおすすめです。
まとめ
PR(パブリック・リレーションズ)は、企業やブランドが一般の人々や特定のステークホルダーと良好な関係を築き、信頼を得るために欠かせない活動です。広告とは異なり、第三者(メディア、SNS、口コミなど)を通じた自然な情報拡散を目的とし、信頼性やブランド価値を高める効果があります。
この記事では、成功したPR事例を10選紹介し、それぞれの事例から学ぶべきポイントについて解説しました。
企業のPR成功事例から学ぶべき点は、ターゲットの心をつかむ共感性のあるストーリー設計や、SNSを活用した継続的なコミュニケーションです。また、認知拡大のためには、サジェスト機能をはじめとする検索エンジン戦略も併用することで、ネット上での存在感をより高めることができます。
PRを活用した企業ブランドの強化を目指す担当者は、これらの事例を参考にし、自社のPR戦略に生かしていきましょう。