誹謗中傷・口コミ

ネットから誹謗中傷を削除する方法と手続きの流れをご紹介

<この記事を監修した弁護士>

モノリス法律事務所 代表弁護士
河瀬 季(かわせ とき)

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SNSやブログなどのネット上で悪質な投稿による名誉毀損が社会問題となっており、総務省が運営する「違法・有害情報相談センター」の集計(2024年時点最新情報)によると2022年度に5,745件の相談が寄せられ、2010年の相談件数の約4.3倍にあたり、誹謗中傷の相談は年々増えています。

ウェブ上の誹謗中傷は時間が経てば経つほどより多くの人が投稿を見るので被害が大きくなります。そのため自身や会社に悪影響が及ぶ前に、迅速に削除に向けて、手続きを行っていくことが重要です。

この記事では、誹謗中傷に関する投稿の削除請求を行う方法、注意すべきポイント、および削除請求以外の法的な対策について詳しく説明していきます。

この記事でわかること

  • 誹謗中傷に対して、削除依頼する方法や流れからポイントがわかる
  • 削除請求をする際にはどのような点に注意すればよいのか
  • ネット誹謗中傷をどこに相談すればよいのか

ネット上の誹謗中傷を削除する方法

インターネット上での誹謗中傷を削除するため、まずは自分で削除請求する方法を検討し、その次に専門家に相談することをお勧めします。ここでは、誹謗中傷を削除するための主な方法を紹介します。

  1. 投稿者に削除を依頼する
  2. サイトの管理者に削除を依頼する
  3. 弁護士から削除請求を行う
  4. 裁判所から削除命令を出してもらう

①投稿者に削除を依頼する

SNSやブログなど、投稿者に直接連絡が取れるプラットフォームで誹謗中傷を受けた場合は、メッセージ機能を使って削除を依頼してみましょう。

メッセージを作成して送信する際には感情的にならず、どのようにその書き込みが自己の権利や利益を侵害しているのかを明確に示すことが重要です。例えば、名誉毀損やプライバシー侵害の具体的な理由を挙げ、それに基づいて投稿の削除を依頼します。

また、削除依頼に応じない場合は、警察や弁護士へ相談する姿勢を示すことで相手が削除に応じやすくなることもあります。

②サイトの管理者に削除を依頼する

サイトの管理者に誹謗中傷の内容を報告することにより、不適切な投稿の削除を依頼する方法となります。

多くのウェブサイト(掲示板、SNS、ブログなど)には、誹謗中傷の投稿を禁止する利用規約が設けられています。

削除依頼の手続きはサイトによって異なるため、削除を申し出る前に、そのサイトの利用規約をしっかりと確認しておきましょう。

またプロバイダ責任制限法という法律が定められているので、プロバイダ責任制限法について詳しく知りたい方は、総務省の公式ホームページも参照してください。

“2024年3月1日に総務省は誹謗中傷などへの対応の強化を図る、プロバイダ責任制限法の改正案が閣議決定されたことを発表“

誹謗中傷が大変深刻な状況になっていることで世の中的にもネット上の誹謗中傷への対応迅速化と窓口設置、運用の透明化をSNS大手プラットフォームに義務付ける方向へと変わってきています。

プロバイダ責任制限法

※総務省HP「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)」より引用

③弁護士から削除請求を行ってもらう

弁護士が問い合わせなどのフォームを使用して、代理人として削除を請求する方法もあります。この方法は弁護士報酬がかかるものの、個人が行うよりも対応されやすい傾向があります。

また、「プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置請求」という手続きがあります。
これは、裁判所を用いることなく、直接サイトの管理者に対して、権利を侵害された本人または弁護士から書面による依頼で、名誉毀損やプライバシー権侵害などに該当する違法な投稿の削除を求めるものです。自分で行うことも不可能ではありませんが、難易度が高い為弁護士による請求が行われる場合が多いです。

ただ、被害者が誹謗中傷の投稿削除を求める一方で、投稿者には表現の自由が保証されているため、サイトの管理者が無断で投稿を削除すると、投稿者から損害賠償を請求されるリスクがあります。

そこで、プロバイダ責任制限法では、サイトの管理者が投稿者に削除の意向を確認し、一定期間を経過しても投稿者から反論がない、または反論が不合理である場合には、投稿を削除してもサイトの管理者は損害賠償責任を負わないものと定められています。

もっともこの方法では、投稿を削除するか否かは最終的にはサイトの管理者の判断によるため、必ずしも削除が行われるわけではないという点には注意が必要です。

④裁判所を通じて削除を求める

上記のような任意的な手段でも削除されない場合、裁判所を通じて削除を求めることになります。

裁判所を通じた手続には、訴訟(裁判)と仮処分という2つの方法がありますが、削除が認められればいずれも強制力をもってサイト管理者に対して投稿の削除を命じることができます。

これらの手続きは個人でも行うことができますが、法律に関する専門知識がないと難しい場合が多いため、弁護士に相談することを推奨します。

発信者情報開示請求とは

「発信者情報開示請求」とは、インターネット上で発生した自分や会社に対する誹謗中傷に関してその発信者の住所や氏名などの特定情報を求めるための開示を請求する手続きのことです。

投稿者を特定することで、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置を取ることが可能となります。

対応が不十分であると、被害が完全に解消されず、同じ投稿者からのトラブル再発もあり得ます。投稿者が再び同様の行為を繰り返さないようにするためには、損害賠償請求等を行い、その過程で誓約を取り付けることが必要です。

プロバイダがログ情報を保持する期間は通常3ヶ月程度が多いです。
そのため、問題の投稿を発見した際には、迅速に開示請求の手続きを行う必要があります。

投稿者を特定する手続きは、投稿の状況や使用されているインターネット事業者によって大きく異なりますが、通常、このプロセスには約9ヶ月程度かかります。そのため、インターネット上の誹謗中傷に詳しい弁護士に依頼することをおすすめします。

プロバイダ責任制限法ガイドラインはこちら

投稿削除の仮処分申立てとは

仮処分申立てとは、民事保全法に基づいた制度で、権利侵害が深刻な場合に、通常の訴訟に先立って権利を保護する目的で裁判所に暫定的な措置を求める申立てです。

この手続きでは、裁判所に対して、投稿者やサイト管理者に対する「投稿削除の仮処分命令」を主に求めます。

この申立てが認められると、裁判所から投稿者やサイト管理者に対して投稿削除を命じる仮処分命令が下されます。

また、投稿者を特定したい場合には、同時に、発信者情報開示の仮処分を申し立てることも可能です。

なお、仮処分は、あくまで権利の保護を目的とした手続であるため、投稿者に対する損害賠償請求などは別途訴訟を提起する必要があります。

仮処分申立てから投稿削除までの流れ

仮処分申立てから、実際に投稿が削除されるまでにはいくつかの手順を踏む必要があります。

削除請求の流れ

  1. 仮処分の申立て
  2. 審尋(しんじん)
  3. 立担保(たてたんぽ)
  4. 仮処分の発令
  5. 強制執行

①仮処分の申立て

まず、サイト運営者を相手として、権利侵害があるとされる投稿の削除を求める申立書を裁判所に提出します。

申立書では、具体的にどの投稿がどのように自分の権利を侵害しているか、そしてその投稿が削除されない場合に受ける可能性のある被害について詳細を記載し、それを疎明するための証拠を添えます。

証拠には、投稿の日時と内容、投稿が行われた場所がわかる資料(例えば、投稿ページのスクリーンショットや印刷物)、および投稿によって既に発生している被害を示す資料を含めるのが一般的です。このあたりの手続き方法はくわしい弁護士に任せておくと安心でしょう。

②審尋(しんじん)

審尋とは、裁判で申立人と相手方(サイト管理者)の双方の主張を聞き、その正当性を判断する手続きです。

一般的には双方審尋(申立人と相手方の両方から意見を聴く手続き)を行い、そのため両方の出頭が必要になります。

単純な内容であれば、審尋が1回で終わりますが、複雑なケースでは複数回行われることもあります。

③立担保(たてたんぽ)

審尋で被保全権利があると認めた場合、申立人に対して一定の担保金の供託を命じることがあります。

申立人は、裁判所から指定された金額を法務局に預ける必要があります。
この担保金は、仮処分によって相手方に損害が生じた場合、申立人が賠償責任を負うことになった時にその責任を担保するために用いられます。

法務局への担保金供託後、供託証書が発行され、この証書を裁判所に提出することで投稿削除の仮処分命令が発令されます。

担保金の額はケースによって異なりますが、一般的には30~50万円が目安とされています。

もし担保を立てる必要がなくなったと裁判所が判断した場合、供託した金額は返還されます。

④仮処分命令の発令

裁判所がサイト管理者に対して投稿削除の仮処分命令を下すと、通常、サイト管理者は従って投稿を削除することが一般的です。

一時的な措置ではありますが、この段階で投稿が削除されるため、申立人の目的は達成され、通常はその後の訴訟などは必要ありません。

申立てから命令が下されるまでの期間は通常1〜2ヶ月が目安とされています。

⑤強制執行

通常は考えにくい事態ですが、もし管理者が削除に応じない場合、強制執行の手続きを進めることができます。

相手方に削除措置を取るよう命じ、それに従わない場合には、強制執行となり、命令が履行されるまでの期間、一定の金銭を支払う義務が生じます。(民事保全法52条1項・民事執行法172条)

時間が経過するにつれて金額が積み上がるので、サイト管理者もやむを得ず対応する状況に追い込まれます。

誹謗中傷に対する法的措置に対する注意点

すぐ対応しようとしない

名誉毀損を含む誹謗中傷投稿に直面したとき、速やかに削除してほしいと感じるのは自然な反応です。

しかし、法的手続きを考慮する場合、「焦って対応する」ことには注意が必要です。
その理由は以下の通りです。

発信者情報開示請求ができない恐れがある

主な理由の一つは、投稿が削除されると、投稿者の身元を特定するための発信者情報開示請求が困難になるためです。

ネット上の誹謗中傷の場合、投稿者が誰か特定することは容易ではありませんが、法的な対応、特に損害賠償請求を行うためには、相手の特定が先行する必要があります。

発信者情報の開示を求めるには、誹謗中傷の証拠が必要です。
しかし、投稿が削除されてしまうと、証拠が消失してしまい、発信者情報開示請求が困難になることがあります。

そのため、削除請求を行う場合は、スクリーンショットやページ印刷などで投稿の証拠をきちんと残しておくことが重要です。

誹謗中傷がエスカレートする可能性がある

誹謗中傷がエスカレートする

単に投稿を削除請求するだけでは、問題が根本的に解決されないことが多くあります。
一度の削除で終わることなく、新たな誹謗中傷の投稿がされる恐れがあります。

特に、被害者が企業や著名人の場合、削除されたことを投稿者が大きく取り上げ、公に問題を騒ぎ立てられることで、さらに炎上するリスクも存在します。

誹謗中傷を相談する先

ネット上の誹謗中傷に対応するため、官民の相談機関も設けられています。下記関連する機関への相談も合わせて検討してみてください。

違法・有害情報相談センター(総務省委託事業)

ネット上の投稿によって名誉棄損やプライバシー侵害などの被害を受けた場合、ネットに詳しい相談員が、削除対応の方法など相談者にアドバイスします。
違法・有害情報相談センターへの相談はこちら

人権相談(法務省)

この窓口ではインターネット上の投稿による人権侵害に関する相談を受け付けています。

相談者が自ら削除依頼を行う方法に関してアドバイスを提供するほか、事案に応じて法務局がプロバイダなどに削除を依頼します。
人権相談の窓口はこちら

誹謗中傷ホットライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)

インターネット上の誹謗中傷に関して受け付けた通報に基づき、国内外のプロバイダなどに対して、利用規約に基づいた削除などの措置を促す通知を行います。(ただし、相談には対応していません。)
誹謗中傷ホットラインへの連絡はこちら

警察への通報・相談

掲示板などに投稿された内容が名誉を傷つけたり、社会的信用を失墜させたり、危害を加えるような場合、これは名誉毀損などの犯罪に該当する可能性があります。

もし相手方に対して刑事事件として処罰を求めたい場合は、最寄りの警察署に相談することをお勧めします。
サイバー犯罪の警察相談先一覧

弁護士への相談

誹謗中傷の削除を弁護士に依頼した場合、通常の流れとしては最初にサイトの管理者に削除を依頼し、それが受け入れられない場合に裁判へと進むことが一般的です。

さらに、弁護士には各々専門分野がありますので、ネット上の誹謗中傷の削除依頼を検討する際は、IT分野に精通している弁護士に相談することをお勧めします。

誹謗中傷を削除するための費用・損害賠償金額の目安

訴えられた場合

損害賠償請求の場合、初めは弁護士を通じた任意の交渉で行われることが多いですが、場合によっては直接裁判になることもあります。
誹謗中傷の削除に必要な費用や損害賠償金額の目安は、以下の通りです。

調査費用の金額

調査費用とは、主に発信者情報開示請求にかかった弁護士費用を指します。

発信者情報開示請求に必要な費用には、裁判費用として数万円。さらに、弁護士に依頼する場合の費用は、弁護士事務所によっても異なりますが、数十万円から100万円程度が一般的な相場です。

これはあくまで、相手方となるサイト運用者や投稿の内容や文量などにもよります。
例えばX(旧Twitter)の1つのツイートのIPアドレス開示を求めるのか、複数なのかにもよって異なります。
また、海外法人の場合、書面の英訳費用など追加で必要となる場合があります。

損害賠償の相場

権利侵害が認められる場合、一般人の場合で10~50万円、企業が名誉毀損を受けた場合は50~100万円が慰謝料の相場といわれています。

まとめ

多くの人は、自分に関する誹謗中傷の投稿がなされた場合、迅速な削除を希望します。
削除請求にはオンラインフォームの使用や法的手続きを通じた方法など様々でそれぞれのメリット・デメリットを理解して検討することが重要です。

ただ、法的措置を検討している場合、焦って削除請求をすることはおすすめできません。
その理由は、投稿が削除された場合、発信者情報の開示が難しくなる可能性があるためです。

また、一度削除しても同様の誹謗中傷が再発することもあり、結果的に問題が繰り返されることがあります。

あまりにひどい誹謗中傷に対する対応としては、法的手段が効果的であり、削除請求だけでなく、損害賠償請求や刑事告訴も視野に検討していきましょう。

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