誹謗中傷・口コミ

誹謗中傷がなくならない理由は?その根深い要因を解説

<この記事を監修した弁護士>

モノリス法律事務所 代表弁護士
河瀬 季(かわせ とき)

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インターネットやSNSの普及により、個人の意見や感情を気軽に発信できるようになった一方で、誹謗中傷の問題はますます深刻化しています。

特にSNSは匿名性を保ったまま投稿できるため、誹謗中傷の言動が増え、社会的にも大きな問題となっています。
誹謗中傷は、時には人々の名誉を傷つけるだけでなく、人が命を断つという悲しい事件も引き起こしています。今や、誰もが手軽にインターネットで情報を発信できる時代となり、人々は誹謗中傷にさらされるリスクも常に存在しています。

しかし、なぜ誹謗中傷はなくならないのでしょうか?

本記事では、誹謗中傷がなくならない理由を掘り下げ、その根本的な要因を解説します。また、誹謗中傷への対策として、問題の投稿を削除する方法や、適切な手順を踏むために弁護士に相談することの重要性についても詳しく解説します。

誹謗中傷とは

誹謗中傷とは

誹謗中傷とは、特定の人や企業などに対して、侮辱的な言葉や嫌がらせ、デマ情報、虚偽の発言などを用いて、その名誉や人格を傷つける行為を指します。誹謗中傷は、単に口頭で悪口を言うことにとどまらず、SNSやネット掲示板などのインターネット上でも広く行われています。特に昨今はSNSやインターネットの普及により、誹謗中傷が匿名で行われることが一般的になり、その影響は瞬時に広がることがあります。誹謗中傷は、相手の社会的立場や感情、名誉に悪影響を与えるものであり、時にはその人の心身の健康に深刻な問題を及ぼすこともあります。

誹謗中傷は増えている?

誹謗中傷は増えている?

参照:総務省

誹謗中傷は近年増加傾向にあります。特に、インターネットやSNSの普及により、匿名で行われやすく、拡散されやすい状況が生まれています。一度インターネット上に拡散された誹謗中傷は、削除が非常に困難であるという問題も指摘されています。

総務省が運営を委託する「違法・有害情報相談センター」によると、ネットの誹謗中傷に関する相談件数は2022年度で5,745件に上り、8年連続で5,000件を超えています。また、令和5年度の相談件数は過去最多を記録しています。

誹謗中傷は確実に増えており、誹謗中傷に関連して社会的に注目される事例も増えてきています。例えば、あるお笑い芸人は過去に名誉を傷つけるデマに悩まされ、20年以上にわたり誹謗中傷に苦しんできました。また、ある女優は9歳でSNSを始め、その後、社会問題について発信するようになった結果、ユーザーから爆破予告や殺害予告を受けるようになりました。

なぜ誹謗中傷がなくならないのか?

なぜ誹謗中傷がなくならないのか?

誹謗中傷がなくならない理由には、さまざまな要因が複雑に絡み合ってます。
ここではなぜ誹謗中傷がなくならないのか?詳しく解説します。

ユーザーが匿名で投稿できるため

誹謗中傷がなくならない大きな理由の一つは、インターネットやSNSにおいて、ユーザーが匿名で発信できることです。日本財団によると、誹謗中傷の原因として挙げられたアンケートでは、いずれも60%以上の人が「SNSの匿名性」を挙げていました。 インターネットやSNSは、誰でも簡単に情報を投稿できる場を提供しますが、その利便性が逆に悪用されることがあります。匿名性のもとで情報を投稿できるため、発信する人は自身の言動に対する責任感が薄れ、無責任な言葉を投げかけることが容易になっているものと考えられます。顔が見えず、名前も明かされない状態で投稿できるため、「自分が誰か」を意識せずに攻撃的なコメントができます。

間違った正義感

誹謗中傷がなくならない理由の一つとして、しばしば「間違った正義感」が関与していると考えられます。SNSやインターネット上では、誰もが自分の意見や立場を投稿できるため、時には自分の信念を正当化するために他人を攻撃することがあります。日本財団による誹謗中傷の原因として挙げられたアンケートでも「SNSの匿名性」の次に多いのが「間違った正義感」です。

特にSNSでは、情報が瞬時に広まり、共感を得ることが容易です。このような状況では、「正義感」に駆られて、他の人の失敗や欠点を批判することが社会的に賞賛される場合があります。これがエスカレートしていくと、誹謗中傷や個人攻撃に繋がりやすくなるのです。何か問題が発生した際に「自分が正しい」と思い込み、他の人を攻撃する行為が増えてしまうことがあります。間違った正義感で誹謗中傷している人は自分が誹謗中傷をしていることに気づいていないことがあります。彼らは、単にその人の間違いを指摘し、言動を正そうとしていると思っていることが多いです。

顔が見えないことで感情が伝わりにくい

誹謗中傷がなくならない理由の一つに、インターネットやSNS上で顔が見えないことが挙げられます。対面でのコミュニケーションと異なり、SNS上では相手の表情や声のトーン、身振り手振りといった感情のニュアンスを直接感じ取ることができません。感情が伝わらないと、言葉の選び方や発言の意図が伝わりづらくなり、無意識に攻撃的な言葉を使ってしまうことが多くなります。

顔が見えないことで、相手の気持ちを直接感じ取ることができないため、インターネット上でのやり取りはしばしば冷徹で無遠慮なものになりがちです。実際、SNSやネット掲示板での発言は、顔を合わせることなく一方的に発信できるため、その人がどんな感情を抱くのかを考慮せずに過激なコメントをすることが容易になっています。また、相手が見えないことと、匿名であることがあいまって、責任感が希薄になりがちです。この結果、誹謗中傷がエスカレートし、許容される環境が生まれてしまうのです。

SNS上では誹謗中傷が助長されやすい特性があるため

SNSの「いいね」や「シェア」などの機能によって、ネガティブな意見や過激な言動が拡散されやすく、広範囲に影響を与えることがあります。さらに、SNSのアルゴリズムがユーザーの興味に基づいてコンテンツを表示するため、過激な発言や極端な意見が目立ちやすく、そうした投稿が注目を浴びることになります。このような投稿が「バズる」ことで、他のユーザーも同様に反応し、誹謗中傷が広がることがしばしばあります。

法的手続きの複雑さ

誹謗中傷がなくならない理由の一つには、法的手続きの複雑さがあります。誹謗中傷の被害を受けた人が法的に対処しようとすると、まず匿名の投稿者を特定する等の手続きを行う必要がある場合が多いですが、これが難しいケースが多く、非常に時間と労力がかかります。投稿者の情報開示請求は、通常、運営会社やプロバイダーに対して行います。しかし、多くの場合、裁判所による決定や命令が必要であり、手続きは煩雑です。

また、情報情報開示請求を行うためには、権利侵害の内容について具体的に説明する必要がありますが、誹謗中傷が権利侵害に該当するかどうかの判断は簡単ではありません。法律の基準が一般にはわかりにくく、どの発言が「侮辱」や「名誉毀損」とみなされるかの判断は専門的な知識を要します。

さらに、法的措置には費用がかかるため、被害者にとって大きな経済的負担となります。こうしたハードルの高さが、被害者が削除や情報開示の相談を進めづらくし、泣き寝入りせざるを得ない状況を生んでいます。その結果、誹謗中傷が繰り返される要因となっています。

誹謗中傷された時の対策

誹謗中傷された時の対策

ネット上で誹謗中傷に直面した場合、その対処方法に悩む人は多いです。また、どのような対策を取れば誹謗中傷が繰り返されず、さらに炎上を防ぐことができるのか、不安を感じている方も少なくありません。
誹謗中傷に直面した際には、冷静に対処し、必要に応じて法的手段も視野に入れることも重要です。
誹謗中傷に対して少しでも被害を軽減するために、以下で誹謗中傷された時の対処方法について詳しくご紹介します。

スクリーンショットをして誹謗中傷の内容を記録

誹謗中傷を受けた場合は、その証拠を確実に保存することが非常に重要です。スクリーンショットは、証拠としての価値が高く、後で誹謗中傷をした人が発言を否定したり、投稿を削除したりした場合でも、その事実を立証するのに役立ちます。特に、SNSやネット掲示板上での誹謗中傷では、相手が投稿を削除する可能性があるため、迅速に行動する必要があります。

これらの証拠は、発信者情報開示請求など法的手続きを行う際にも使用することができます。

スクリーンショットを取る際には、日時やURLなども記録されるようにしておくと良いでしょう。発言がいつ、どのプラットフォームで行われたかの証拠が明確になります。また、関連するすべてのアカウント名やユーザー名も記録しておくことが重要です。

投稿を削除してほしい場合は削除依頼をする

ネット上の記事やコメントが自分を誹謗中傷していると感じた場合、削除依頼を自分で行うことが可能です。該当するサイトの問い合わせフォームを利用するか、SNSの場合はDM(ダイレクトメッセージ)を通じて削除依頼をすることが考えられます。
投稿の削除依頼を行う際には、サイトの規約を事前に確認し、どの規定に違反しているかを明確にし、その条項を引用しながら削除の申請を進めることが重要です。

しかし、すべての削除依頼が承認されるわけではありません。投稿が規約に違反しているかの判断は運営会社に委ねられるため、投稿がサイトの規約に違反していないと判断されると、削除されない可能性もあります。そのため、具体的な条項と照らし合わせて、自分のケースがどう規約に抵触しているのかを具体的に説明することが求められます。

悪質な場合は弁護士と協力して法的手段を取ることを検討

もし自分で行った削除依頼が受け入れられなかった場合、特に悪質な投稿については、法的手段を検討することが賢明です。悪質なネット上の誹謗中傷の投稿や虚偽の情報拡散は、個人の名誉や社会的評価を著しく損なう可能性があります。

通常の削除依頼で問題が解決しない場合は、法律の専門家に相談することを検討しましょう。本人による削除依頼では解決しなかった問題も、弁護士名義で削除依頼を行うことで問題が迅速に解決する場合もあります。また、弁護士は、問題解決に向けた更なる法的手続きやアドバイスを提供してくれます。

たとえば、法的拘束力をもって投稿を削除するための仮処分を裁判所に申し立てたり、誹謗中傷の投稿に使用されたプロバイダに対して情報開示請求を行うことで、投稿者の身元を特定したりすることも可能となる場合があります。これらの手続きは非常に複雑であり、法的根拠や手続きに関する知識が求められるため、専門家によるサポートが必要です。また、弁護士は裁判所に提出する書類の準備を行うだけでなく、訴訟の進行における代理人としても活動し、法的手続きがスムーズに進むようサポートしてくれます。

相手への損害賠償請求も視野に入れる

弁護士に相談することで、誹謗中傷の投稿の削除要求だけでなく、損害賠償請求についても相談ができます。名誉毀損やプライバシー侵害など、悪質な投稿や不当な情報によって個人や企業が受けた損害に対して損害賠償を請求する手続きは複雑で、法的アプローチが必要です。

弁護士は、損害の評価から賠償額の算定、裁判所に提出するための書類作成まで、適切な手続きを指導しサポートします。さらに、どのような証拠を集めた方が良いのか、裁判や交渉の進行方法についての専門的な知識を持っているため、こちら側に有利な結果を導くことが期待されます。

誹謗中傷された時は弁護士に相談しよう

誹謗中傷された時は弁護士に相談しよう

ネット上での誹謗中傷に直面した場合、個人で対応することも可能ですが、多くの時間と労力が必要になります。自身で対応する場合は、証拠の収集、関連する法律の理解、削除要求の手続きなど、さまざまなステップを慎重に進めなければなりません。

一方で、法律の知識や手続きに関する経験を持つ専門家に相談することで、法的措置の提案、交渉や訴訟の進行まで、一連のプロセスを迅速かつ効率的に進めることができます。また、これらのサポートは、被害者の心理的負担を軽減することにもつながります。

誹謗中傷に対応する際には、専門知識と経験を持つ専門家に相談することで、時間と労力を節約し、より確実な解決を期待できます。特に、ネットの掲示板やSNSでの誹謗中傷に対処する際は、インターネットの問題に精通した弁護士に相談することが推奨されます。

まとめ

誹謗中傷がなくならない理由は、インターネットとSNSの普及が大きく影響しています。インターネット掲示板やSNSは特に匿名での発言が可能なため、ユーザーは自分の言動に対する責任を感じにくくなります。また、インターネット上の顔が見えないコミュニケーションは、相手の感情が伝わりにくいため、過激なコメントがエスカレートしやすい環境を作り出しています。このような状況は、間違った正義感による個人攻撃を正当化し、誹謗中傷がさらに広がる要因となっています。

さらに、誹謗中傷に対する法的手続きの複雑さも、問題が解決しない理由の一つです。法的な対応が困難であり、投稿者の特定や法的な基準の解釈が難しいため、多くの被害者が躊躇することになります。この状況では誹謗中傷が繰り返されやすく、被害者が泣き寝入りするケースが増えています。

この問題に対処するためには、証拠の保存や削除依頼、場合によっては法的措置を検討することが重要です。特に悪質な場合には、専門知識を持つ弁護士に相談し、迅速な解決を図ることが効果的です。誹謗中傷の問題には個々のケースに応じた対応が必要であり、インターネットが当たり前になった社会における課題として真摯に向き合うことが求められています。

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