飲食店の経営者として、自分の店舗の評判は非常に気になるものです。
口コミは集客に大きな影響を与えるため、特に重要視される部分です。
例えば、「ひどい口コミを投稿されたから削除したい」「こんな口コミは他のお客さんに見られたくない」と感じることもあるでしょう。
特に食べログに悪い口コミが投稿されると、飲食店にとっては大ダメージとなります。
事実無根の悪評や過剰に誇張されたクレームは、集客に大きな影響を及ぼすことが多々あります。
こうした場合、食べログに削除依頼を行うことができますが、削除するかどうかは運営側の判断次第となります。
この記事では、食べログの誹謗中傷口コミを削除する方法を中心に、口コミでお困りの飲食店経営者の方々に役立つ情報を解説します。
食べログの口コミのトラブル
食べログは、多くの飲食店やユーザーが活用する日本最大級のグルメサイトですが、その影響力ゆえにさまざまなトラブルが発生することもあります。
特に、悪質な口コミや評価に関する問題がよく取り上げられます。
まず、事実無根の悪評や過剰に誇張されたクレームが投稿されることがあります。
これにより、飲食店の評判が著しく損なわれ、来客数の減少といった経済的な打撃を受けることも少なくありません。
また、飲食店側からの口コミ操作の疑惑もトラブルの一因となっています。
特定の業者による口コミの水増しや、自作自演の高評価レビューが問題視されています。
これらの行為は、ユーザーの信頼を損ねるだけでなく、他の正当な飲食店にとっても不公平な競争環境を作り出します。
さらに、評価基準の不透明さもトラブルの原因です。
食べログの★の数がどのように決定されるのかが明確でないため、一部の店舗が評価の低さに不満を持つことがあります。
このような不満が蓄積されると、サイト全体の信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。
以上のように、食べログにはさまざまなトラブルが存在します。
飲食店経営者は、こうした問題に対処するための適切な対策を講じる必要がありますし、ユーザーも口コミの内容を慎重に見極めることが重要です。
食べログの口コミの影響力
食べログでは、飲食店を★の数で評価し、口コミを投稿することができます。
日本最大級のグルメサイトであり、ユーザー数や掲載店舗数も非常に多いです。
そのため、飲食店を選ぶ際に食べログに投稿された口コミを参考にするユーザーも少なくありません。
口コミが良いか悪いかによって、来客数が大きく変わることもあります。
それほど、食べログの口コミは影響力が高いのです。
食べログの口コミ削除は可能?
食べログの口コミは、食べログに削除依頼を出すことで削除できますが、全てが削除依頼の対象になるわけではありません。
次に、口コミ削除の対象はどのようなものか、具体例を見ていきましょう。
食べログの口コミ削除の対象は?
食べログのガイドラインでは、「具体的な食事内容について書く」「関係ない事柄の記述は控える」など、口コミの書き方について細かく定められています。
これらのガイドラインに違反しているユーザーの口コミは、お店側が削除依頼を行うことで削除されることがあります。
ガイドライン内で明確に「禁止」とされている口コミ内容は以下の通りです。
禁止されている口コミ内容
- 個人への誹謗中傷、店舗への断定的批判、不適切な表現
- 法令に反する行為や犯罪行為に結びつく口コミ
- 対価を得ることやお店をPRすることを目的とした口コミ
- 店舗関係者による口コミ
出典:https://tabelog.com/help/review_guide/
具体的な禁止例
- 差別的な内容
「○○人だから接客のレベルが低い」 - 断定的かつ否定的な内容
「こんなマズい店に行くのは無駄だ」 - 個人を中傷する内容
「○○という店員の態度が悪い」 - 事実確認が難しく、店側に悪影響を与える内容
「店員に怒鳴りつけられた」 - 不適切な表現
「つぶれてほしい 金返せ」 - 犯罪に繋がる内容
「店主は高齢なので食い逃げできる」 - 対価を目的とした口コミ
「口コミを投稿したら割引クーポンがもらえた」
また、「プライバシーや著作権等の侵害」「内容の確認が困難な口コミ」「個人的なクレームやトラブル」にあたる投稿についても、「ご配慮ください」「ご遠慮ください」との記載があります。
口コミを確認し、該当する場合は早めに対処することが重要です。
食べログの口コミ削除できないものは?
店舗の評判に悪影響を与えそうな口コミでも、削除されないパターンがあります。
食べログの口コミで削除されないケースを具体的に紹介します。
食べログのガイドラインに違反していない
食べログは口コミに関するガイドラインを設けており、そのガイドラインに違反していない口コミについては削除されません。
「味が微妙」「もう来店しない」といった表現は、食べた人の個人的な批評や感想と考えられます。
これらは表現の自由の範囲内と見なされるため、お店側にとって都合が悪くても削除の対象にはならないでしょう。
口コミだけでなく店舗情報ページは削除可能?
食べログに誹謗中傷とも取れる口コミが投稿された場合、飲食店の経営者としては「こんな酷い口コミをされるくらいなら、店舗情報自体を削除してほしい」と考える人もいます。
しかし、実際のところ、店舗情報ページ自体を削除してもらうのは難しいのが現状です。
「勝手に掲載しておいて削除依頼を受け付けないのはおかしい」と考える方もいるかもしれませんが、店舗情報のページ削除を求める訴訟においては、表現の自由の侵害になる等の理由で削除請求が棄却されるケースもありました。
食べログの口コミ削除依頼の手順
食べログの口コミ削除依頼は以下の3ステップです。
手順①
食べログで口コミの削除依頼を出す際は、フォームから削除依頼を行います。
各口コミの下の方にある、「問題のある口コミを連絡する」をクリックします。
手順②
「お問い合わせフォーム」(入力画面)が表示されたら、「お問い合わせ内容」と「メールアドレス」を入力します。
お問い合わせの内容には削除依頼の理由を明確に記載しましょう。
手順③
「上記の同意事項に同意の上、記入した内容を確認する」をクリックします。
以上で、口コミの削除依頼は完了です。
ただし、「問題のある口コミの報告」に関して、基本的に食べログ側から返信は行っていないので注意してください。
食べログの口コミ削除依頼の注意点
口コミ内容がガイドラインに違反しているかどうかは、食べログの専任チームが目視でチェックします。
そのため、問題のある口コミをスタッフが正確に特定できるように、以下のポイントを意識してお問い合わせ内容の記載を行うと良いでしょう。
口コミのURLやユーザー名の記載
具体的な口コミのURLやユーザー名を明示することは重要です。
これにより、専任チームが該当する口コミを迅速に確認できます。
ガイドライン違反箇所の明示
口コミのどの部分がガイドラインに違反しているかを具体的に示す必要があります。
「事実無根のことが書かれています」だけでは、担当者が問題の箇所を特定できない可能性があります。
以下の例文のように、「店員が不親切で対応が…」といった形で明示しましょう。
ガイドラインの具体的な違反項目の記載
「口コミはガイドライン違反だ」とだけ書くのではなく、具体的に「ガイドラインで禁止されている、事実と異なる内容、衛生管理面のクレームに該当します」等と明記する方が良いでしょう。
これにより、担当者が迅速かつ正確に対応できます。
【例文】
お世話になります。
株式会社○○ イタリアンレストラン×× 店長の△△と申します。
根拠のない誹謗中傷にあたる口コミが投稿されているので、その削除をお願いいたします。
URL:(※該当のURLを記載)
2022年12月に訪問されたID:……さんの口コミの2行目に「味の割に値段が高いぼったくり」と記載されていますが、そのような事実はありません。
この内容は削除ガイドラインの「決めつけ」「事実とは異なる内容」「明らかな誹謗中傷行為」に違反しています。
削除対応をよろしくお願い申し上げます。
口コミ削除できなかった場合は?
自分で食べログの口コミ削除依頼をしても、必ずしも削除されるとは限りません。
自分でお問い合わせフォームに記載した理由で削除されなかった場合、より明確な理由が必要だと考えられ、これ以上自力での対応は難しいかもしれません。
その場合でも、弁護士に依頼し、さらに削除依頼をすることで削除される確率が高まります。
お問い合わせフォームから削除依頼をする
改めてお問い合わせフォームから削除依頼を行います。
食べログトップページの下部の「ヘルプ・お問い合わせ」というボタンをクリックし、お問い合わせが可能です。
弁護士が口コミの内容に応じて、削除依頼の理由をより法的な観点で記載することで、削除されやすくなることがあります。
裁判所へ削除仮処分命令申立
お問い合わせフォームからの削除依頼で削除されなかった場合は、裁判所に削除仮処分命令を申立てます。
裁判所に申し立てを行い、裁判所に主張が認められ、仮処分による削除命令を出してもらえた場合、口コミの削除に応じてもらうことができます。
食べログの口コミ削除について弁護士に依頼するメリットとデメリット
口コミの削除依頼で消えなかった場合、弁護士に依頼するのが効果的です。
ただし、弁護士に依頼する際には、メリットとデメリットの両方を理解して慎重に検討しましょう。
口コミ削除を弁護士に依頼するメリット
法的根拠を重視した対応
弁護士は法律の専門家であり、口コミ内容がどのように権利を侵害しているのかを冷静に判断できます。
これにより、法的根拠に基づいた強力な削除依頼が可能です。
経営に集中できる
弁護士に一任することで、煩雑な手続きから解放され、お店の経営に集中しやすくなります。
弁護士は食べログへの削除依頼や、裁判所への仮処分申立てを代行してくれます。
口コミ削除を弁護士に依頼するデメリット
費用がかかる
弁護士費用が発生します。着手金や成功報酬は法律事務所ごとに異なりますが、数万円から数十万円程度かかるケースもあります。
依頼前に費用体系を確認し、予算に見合うかどうかを考慮しましょう。
削除が実現できない可能性
弁護士に依頼しても、必ずしも削除が実現できるとは限りません。
削除ができなかった場合の費用や、削除が成功した場合の最大費用を事前に確認しておくことが重要です。
口コミ削除を弁護士に依頼することで、法的に強固な対応が取れ、経営に専念できる環境が整いますが、費用面のリスクも伴います。
これらの点を総合的に考え、最適な判断を行うことが重要です。
食べログの口コミへの削除依頼以外の対応法
投稿者を特定して損害賠償請求をする
食べログに投稿された誹謗中傷の口コミが名誉権やプライバシー権、営業権などの権利を侵害している場合、プロバイダー責任制限法に基づき「発信者情報開示請求」を行うことができます。
発信者情報開示請求の手順
①IPアドレスの開示請求
まず、食べログを運営するカカクコムに対して、投稿者のIPアドレスの開示を求めます。(IPアドレスの保存期間は3ヶ月程度)
カカクコムが開示に応じない場合は、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分命令を申し立てます。
②インターネットサービスプロバイダへの情報開示請求
IPアドレスが判明したら、投稿ユーザーが契約しているインターネットサービスプロバイダに対して契約者情報の開示を求めます。
多くの場合、任意での情報開示は期待できないため、発信者情報開示請求訴訟を提起する必要があります。
損害賠償請求
裁判で開示が認められれば、投稿ユーザーの氏名や住所がわかります。次に、誹謗中傷により被った損害の賠償を請求します。
まずは内容証明で請求し、それに応じない場合は損害賠償請求訴訟を提起するのが一般的です。
悪い口コミを逆利用する
「食べログが削除依頼に応じてくれない…弁護士に依頼するのも費用がかかる…このまま放置していると店舗の評判が下がる…どう対処すればいいのか…」と悩む飲食店の方もいるでしょう。
このような場合、食べログの悪い口コミにこそ丁寧に返信することがとても重要です。
悪い口コミに対して丁寧に対応することで、他のユーザーに誠実性をアピールできます。
良いサービス・接客を心がけている店舗の姿勢が伝われば、店舗に対する信頼も向上するでしょう。
事実誤認がある場合、無理に謝罪する必要はありませんが、事実確認が取れたものや顧客の評価に関する部分については共感する姿勢を見せることが効果的です。
人はネガティブな情報に敏感に反応する傾向があります。
そのため、悪い口コミがあったときこそ、店舗の方針や姿勢、正しい情報を広くユーザーに周知させる絶好の機会と捉えましょう。
例えば、「頼んだメニューが美味しくなかった」といった口コミに対しては、口コミを行ったユーザーに来店のお礼や共感、謝罪を伝え、自慢の新メニューなどの新情報を加えることで店舗のPRとして活用できます。
【料理がまずいと言われた場合の返信例】
〇〇様
この度は当店をご利用いただき、誠にありがとうございました。 せっかくご来店いただいたのに、ご期待に沿えず大変申し訳ございません。 お客様のご意見を真摯に受け止め、メニューの改善に努めて参ります。
新たに開発したメニューがございますので、次回ご来店の際にはぜひお試しください。 新メニューは地元の新鮮な食材を使い、特に味にこだわった一品となっております。
この度は貴重なご意見をありがとうございました。 お客様のまたのご来店を心よりお待ちしております。
店長 △△
【提供が遅いと言われた場合の返信例】
〇〇様
この度は当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。 ご注文いただいた料理の提供が遅れてしまい、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。 お客様からのご意見を真摯に受け止め、今後のサービス改善に努めてまいります。
なお、比較的空いている時間帯として、平日の午後1時30時から4時の間は混雑が少なく、スムーズにお食事をお楽しみいただけるかと思います。 次回ご来店の際には、この時間帯にお越しいただければ幸いです。
貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。 お客様のまたのご来店を心よりお待ちしております。
店長 △△
食べログでの悪い口コミを防ぐ方法
悪い口コミを削除できない場合もあるため、まずはユーザーから悪い口コミが発生しないよう対策するのが一番です。
悪い口コミよりも良い口コミの方が、圧倒的に多く投稿されるように改善を図っていきましょう。
悪い口コミを見て感情的になることもあると思いますが、一旦冷静になって、その口コミがなぜ投稿されたのか、本当に改善すべき点があるのかを考えてみましょう。
冷静に考えることで、削除申請以外にも、店舗を良くするための改善点が見つかるはずです。
悪い口コミを長期間放置すると、他のお客様にも悪い印象を与え、新たな悪い口コミを招く恐れがあります。
情報開示請求を行う場合はIPアドレスの保存期間が3ヶ月程度と短いため、誹謗中傷の口コミを見つけたら迅速に削除依頼を出すことが重要です。
まとめ
食べログの口コミは飲食店の評判に大きな影響を与えるため、悪い口コミへの対応は重要です。
削除依頼を出すことは可能ですが、削除が受理されない場合でも、弁護士に相談することで法的に強力な対応が可能となります。
ただし、弁護士費用や、削除が確実でないリスクを考慮する必要があります。
また、悪い口コミに対して丁寧に返信することで誠実性をアピールし、他のユーザーからの信頼を得るよう心がけましょう。
悪い口コミを投稿されないよう、日頃からのサービス改善も不可欠です。
根拠のない誹謗中傷は迅速に削除依頼を行い、他のユーザーに悪影響を与えないよう意識してください。
冷静に口コミの内容を見極め、改善点を見つけ、より良い店舗運営を行っていきましょう。